2020 Fiscal Year Annual Research Report
放射光・FEMを活用した第三世代超高張力鋼の損傷挙動の解明と逆問題解析への発展
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20H02484
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
松野 崇 鳥取大学, 工学研究科, 准教授 (30781687)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 知子 地方独立行政法人鳥取県産業技術センター, 無機材料担当, 主任研究員 (00587644)
渡邊 育夢 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 構造材料研究拠点, 主任研究員 (20535992)
北條 智彦 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (50442463)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | TRIP鋼 / 微視的解析 / 放射光 / 有限要素法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究テーマはTRIP鋼と呼ばれる高強度・高延性を示す構造用鋼材に対し,微視的な応力やひずみの分布と延性破壊を解析するものとなる.これにより,さらなる高強度・高延性化を得る材料設計指針を得ることを目的としている. 延性破壊が起こる際の応力状態の多軸性と微視的な変形に着目した点を特徴としており,2020年度においては兵庫県の大型放射光施設SPring-8にて引張変形中の引張軸と引張直交軸方向の3軸方向の応力を測定した.その結果としてTRIP鋼中の異なる金属組織それぞれに対して,その3軸方向の応力配分を測定することに成功した.また,ナノインデンテーションによる各組織の硬さ分布を測定し,さらに微視的な力学シミュレーションを実組織に基づいて実施するべく,EBSDによる3次元組織像も取得した. 放射光では2種のTRIP鋼に対して測定を行なったが,オーステナイト組織における静水応力は母相との強度の関係で異なる結果を得た.すなわち,母相の強度が高い場合はオーステナイト組織は著しく高い引張側の静水応力を示し,逆に母相の強度が低い場合は圧縮側の静水応力を示した.その一方で,放射光回折より得られたオーステナイト組織からマルテンサイトへの変形誘起変態の割合はほぼ塑性ひずみのみに影響されるものであった. ナノインデンテーションと3次元組織像についてはまだデータ整理が終わっていないが,概ね狙い通りのデータが得られている.来年度以降にその知見をまとめることができるものと考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度において各組織の微視的な変形抵抗の同定まで完了する予定であったが,新型コロナウィルス禍の影響もあり若干の遅れが生じている.しかしながら,同定に必要な実験は完了しており2021年度早々にこの遅れは取り戻すことができる見込みとなっている.
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は微視的な引張変形シミュレーションを行い,局所的な延性破壊における力学的な条件を明らかにする予定である.このために2020年度の実験により得たデータを整理して有限要素法のモデルに落とし込む.まず,放射光により得られた各組織の応力分配とナノインデンテーションによる硬さ分布を参照として各組織の変形抵抗を同定する.その後,3次金属組織像から有限要素法用のメッシュを生成する.放射光による応力測定より得た引張軸と引張直交軸方向の巨視的な応力を境界条件とし,これらのデータを入力とした引張変形シミュレーションを実施する.
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