2021 Fiscal Year Annual Research Report
液ー液抽出における貴金属錯体の界面反応及び高次構造に基づく新規分離系開発
Project/Area Number |
20H02497
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
成田 弘一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究チーム長 (60357689)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 文之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (20344153)
元川 竜平 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究主幹 (50414579)
阿久津 和宏 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発, 中性子科学センター, 技師 (60637297)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 貴金属 / 溶媒抽出 / 溶液化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)ジブチルカルビトール-塩化金酸抽出メカニズム 塩酸溶液から金を抽出したジブチルカルビトール(DBC)中に含まれる水分量を、潤滑油水分気化装置を接続したカールフィッシャー水分計により測定した。その結果、抽出される金濃度の増加とともに水分量も増加し、金イオン1個当たり6から7個の水分子が共抽出されることが分かった。またその水分子の数は、水相の塩酸濃度に依存しなかった。広域X線微細吸収構造測定からは、水相の塩酸濃度に依存せず、有機相中の金は[AuCl4]-が優勢であることが示された。DFT計算では[AuCl4]-と水/DBCとの相互作用について調べた。DBC-金抽出錯体の高次構造に関しては、原子力機構JRR-3における中性子小角散乱実験により調べ、今年度は実験条件の最適化等を行った。 (2)パラジウム抽出速度への1-オクタノール濃度の影響 水相に1 mMパラジウムを含有した1M塩酸溶液を、有機相に10 mMジ-n-ヘキシルスルフィド(DHS)及び特定濃度の1-オクタノールを含有したオクタン溶液を用い、DHSと1-オクタノールのモル比と抽出速度の関係を明らかにした。1-オクタノール濃度がおよそ200 mMの際に、抽出速度が最も小さかった。1-オクタノール少量添加によるパラジウム抽出速度の低下は、配位型抽出を行う他のスルフィド系抽出剤でも確認されたが、イオン対型抽出系では生じなかった。また、中性子反射率測定データの解析により、有機相-水相界面付近の水分子及びDHS分子の分布を推測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DBC-金抽出系に関しては、共抽出される水分子の数を把握したことで、金抽出後有機相の組成が明らかになった。さらに高次構造に関する知見を得るための中性子小角散乱実験もスタートし、データ取得を開始した。DHSによるパラジウム抽出速度と1-オクタノール添加量との関係では、DHSと1-オクタノールのモル比と抽出速度の関係がより詳細に明らかになり、中性子反射率データによる有機相―水相界面付近の成分比との関連性についても、有用な知見が得られ始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
DBC-金抽出系に関しては、令和3年度までの研究で抽出後有機相の組成が明らかになり、また共抽出される水分子も多いことから、小角散乱実験等により[AuCl4]-の外圏における水分子及びDBCによって構成される高次構造を調べる。さらに計算化学的アプローチで、構造データを検証する。パラジウム抽出速度と1-オクタノールの関係では、より詳細に界面張力測定を行うことで、中性子反射率測定で得られた界面付近の濃度分布と界面活性との関連性を調べ、特異なパラジウム抽出速度変化の原因を明らかにする計画である。
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