2021 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ材料塗布プロセスにおけるミクロ動的濡れ特性の高精度計測と推算モデル構築
Project/Area Number |
20H02498
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
庄司 衛太 東北大学, 工学研究科, 助教 (20780430)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 動的濡れ / ナノ材料 / 塗布 / エリプソメータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はナノマイクロスケールの二次元膜厚分布の動的測定技術である位相シフトエリプソメータを軸に,ナノ材料の動的濡れについてミクロな視点から明らかにすることを目的としている。前年度に改良した位相シフトエリプソメータに加え,反射干渉顕微法の原理を併用し,基板上の各種液滴の接触線近傍ナノ液膜のみならず,液滴の接触半径,接触角,溶媒蒸発後の堆積ナノ粒子層の測定を進めた。本年度得られた成果は以下である。 (1) ナノフルイド液滴の動的濡れ:ナノフルイドの分散媒には各種n-アルカン,ナノ粒子には超臨界水熱合成法で合成したデカン酸修飾セリアナノ粒子(粒径およそ6 nm)を用いた。本年度は滴下方法としてインクジェット装置を導入し,ピコリットルからマイクロリットルに渡る幅広い滴下量の制御を可能とした。これらを利用した実験の結果,分散媒種,ナノ粒子濃度,試料滴下量の条件に応じてマクロの接触線はstick-slip現象のような挙動を示すこと,接触線のピニング時にはナノ液膜領域で粒子堆積が生じること,すなわちナノ液膜内にナノ粒子が存在しうることが示された。 (2) 純溶媒の動的濡れ:含有ナノ粒子および分散媒蒸発の個々の影響を明らかにするために,ナノ粒子を含まない純溶媒,特にナノ材料で用いられるような低粘度液体(今回は各種n-アルカンを対象)を使用した実験を進めた。具体的には,蒸発の影響を除去する飽和環境下でミクロ動的濡れ特性の一つである先行薄膜の形状測定を行った。研究代表者の既往の研究において,ポリジメチルシロキサンは先行薄膜の理論の一つである断熱先行薄膜の挙動しか示さなかった。しかし,今回の試料では断熱先行薄膜に加え,異なる形態である拡散先行薄膜が観察され,さらにはこれら形態の遷移が観察された。また,先行薄膜理論に基づき新たに定義した無次元数を用い,これら形態遷移を整理できる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
位相シフトエリプソメータおよび反射干渉顕微法の原理を利用し,各種測定を順調に進めることができており,純溶媒についてはミクロ動的濡れ挙動の無次元数による整理の可能性を示せた。一方,液膜内ナノ粒子分布の観察を目的とした全反射型暗視野顕微鏡の光学系構築は進めたが,前述のデカン酸修飾セリアナノ粒子について観察可能な条件を見出すことはできていない。以上を鑑み,上記の達成度と考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに観察されたstick-slip現象といったマクロの濡れ現象とミクロ動的濡れの関係について理論的な考察を進める。また,純分散媒の系について,蒸発の影響を明らかとするための実験を進め,さらに,高分子ナノコンポジット系(ナノ粒子/溶媒/高分子三成分系)の実験を始める。また,全反射型暗視野顕微鏡による液膜内ナノ粒子分布のin situ観察については,ナノ粒子種を含めて検討を進める。
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Research Products
(10 results)