2020 Fiscal Year Annual Research Report
Chemical engineering approach to control of electrode-electrolyte junction interface of all solid state lithium battery
Project/Area Number |
20H02501
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
谷口 泉 東京工業大学, 物質理工学院, 准教授 (00217126)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 噴霧熱分解法 / 正極材料 / 球状ナノ構造粒子 / リチウム二次電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
硫黄過剰不定比組成の硫化銅(CuS1+x)の合成を、マイクロ空間を用いたセラミックス微粒子の合成法の一つである噴霧熱分解法を用いて、合成温度、および原料溶液中のCuとSのモル比を変えて行った。その結果、不純物を含まない単一の結晶構造を有する不定比組成硫化銅(CuSx+1, 0≦x≦1.0)を合成することができた。また、合成した試料を正極活物質として、負極に金属リチウム、電解液としては有機電解液を用い、ハーフセル(コインセル)を作製し、充放電サイクル試験、レート特性試験、サイクリックボルタンメトリー測定を行った。充放電サイクル試験では、CuS1.58の組成の材料が0.1Cの条件で900 mAh/gの大きな放電容量を示すとともに、100サイクルにわたって良好なサイクル特性を示すことを明らかにした。さらに、この材料をアセチレンブラックと複合化することで、1200 mAh/gの放電容量を示すことを見出した。また、充放電後のセルを解体し、電極のXRD測定の結果をもとに、その電気化学反応メカニズムについて考察を行った。以上の結果により、硫黄過剰不定比組成のCuSx+1の有機電解液における正極材料の電気化学特性を明らかにした。 さらに、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2球状ナノ構造粒子の合成とその表面へのLiNbO3コーティングをゾルゲル法により試みた。LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2球状ナノ構造粒子の合成は、噴霧熱分解法とその後の焼成により行い、合成条件(合成温度、焼成温度、原料溶液濃度)と合成された試料の電気化学特性の関係を明らかにすることで、合成条件の最適化を行った。最終的には、噴霧熱分解温度500℃、焼成温度900℃、焼成時間4時間の条件で得られた試料が最も優れた電気化学特性(0.1Cで初期放電容量:160 mAh/g)を示すことを明らかにした。さらに、この試料を用いてゾルゲル法により、LiNbO3のコーティングを試み、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2表面にそのコーティング層の存在を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における目的を達成させるために設定した本年度の研究計画を総て実行することができた。但し、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2正極材料の電池特性に改善の余地が残されているということで、研究の進捗状況としては、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したように、今後、まず、LiNi1/3Co1/3Mn1/3O2正極材料の電池特性のさらなる改善を試みる。また、その材料表面へのLiNbO3のコーティングを流動層を用いた新規な方法で試みる。 さらに、申請者がこれまで行ってきたリン酸コバルトリチウム(LiCoPO4)の研究成果に基づき,空気雰囲気で一段のプロセスで電池特性に優れたLiCoPO4の合成プロセスの検討を行う。具体的には,マイクロ空間を用いたセラミックス微粒子の合成法の一つである噴霧熱分解法を用いて、ガス流量,合成温度、および原料溶液の濃度を変えるとともに,原料溶液への様々な微粒子分散剤を加えることで行う。合成した試料の結晶相の同定,化学構造,粒子の表面および内部構造は, XRD,XPS,FT-IR,SEM.TEM,窒素吸脱着法による比表面積および細孔径分布の測定により行う。さらに,合成した試料を正極活物質として、負極に金属リチウム、電解液としては有機電解液を用い、ハーフセル(コインセル)を作製し、充放電サイクル試験、サイクリックボルタンメトリー測定、交流インピーダンス測定を行う。これにより,全固体リチウムイオン二次電池用の新規高電位正極材料の開発を試みる。
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