2021 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of deposition mechanism of colloidal crystal thin film with Alder phase transition and continuous deposition process
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20H02510
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
不動寺 浩 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (20354160)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
打越 哲郎 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (90354216)
久保 祥一 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 准教授 (20514863)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コロイド結晶 / FDTD計算 / R-to-R塗工 / ブラッグ回折 / Dipコーティング / 塗布乾燥 / 単分散粒子 / アルダー相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はコロイド懸濁液が濃縮結晶化するメカニズムの解明、成膜速度の高速化の可能性、そして濃縮結晶化による連続成膜の検証の3課題を設定している。 ①2020年度に科研費で設計した自作の成膜装置を稼働させることで温湿度が制御下での濃縮結晶化が可能となった。湿度の影響が成膜過程に大きく影響することが分かった。オイル被覆法の縦型成膜プロセスを温湿度が制御された環境で実施し、引上げ速度と膜厚の関係を再検討した。Dipコーティングの成膜理論におけるEvaporationモデルに類似している。また、東工大の研究分担者による有限差分時間領域(FDTD)計算によるコロイド結晶のスペクトルシミュレーションにより、膜厚と反射スペクトルの関係が明らかとなった。この計算結果よりブラッグ回折ピークの解析が進み、ピーク半値幅(FWHM)及びピーク反射率と最密充填コロイド粒子層の積層数による変化が分かるようになった。このFDTDの計算値を理論値として、実際のコロイド結晶薄膜の測定値との比較により、これまで難しかったコロイド結晶の結晶性を評価することが可能になった。 ②エタノール系シリカ懸濁液を調整し、基板の親水処理無しで成膜可能であること及びバーコータによる高速塗工の成膜出来ることが分かった。なお、水平型のバーコータータイプの成膜装置では一定の速度以上ではコロイド結晶薄膜の結晶性に影響が無いことも分かった。Dipコーティングモデルでは速度が速い場合、Landau-Levichモデルに従うことが報告されている。エタノール懸濁液の高速成膜についてこのモデルが適用できるか検証の為、装置改造や懸濁液調整(シリカ粒子分散液)を行った。 ③2021年の10月に導入したR-to-R成膜装置のマイクログラビア塗工の立ち上げ作業も完了できた。この連続成膜には基板の親水処理が不要な②の研究結果で最適化された懸濁液を使用する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題の3つのテーマの進捗状況であるが ①濃縮結晶化の詳細なメカニズムの解明:これまでコロイド結晶の品質評価について定量的な評価指標が無かった。今回、積層数毎のコロイド結晶薄膜についてFDTD計算を行った。計算から反射スペクトルを導出しこれを理論値とした。一方、積層数を変えて成膜したコロイド結晶の反射スペクトルを測定した。計算と実験を比較できるようになり、反射ピークの強度及び半値幅(FWHM)について、理論値に対する実験値の比較によりコロイド結晶を定量的に評価することが可能となった。当初計画以上に進展している。 ②成膜速度の高速化の可能性:エタノール懸濁液系については系統的な実験を通して、従来のオイル被覆法と比較し、500倍程度の高速成膜でも一定の結晶性を維持できる。また、FDTD計算の評価指針より結晶性の比較が可能になった。このテーマはおおむね順調に進展している。 ③濃縮結晶化による連続成膜の検証については装置の導入が2021年度10月と当初導入時期(2020年度前半)より遅延したため、装置の立ち上げ作業なども含め、本格的な実験がやや遅れている。また、初期実験でも導入前の試験と同等の積層数に達しておらず、マイクログラビアロールの調整を含め、塗工装置の立ち上げ調整が必要である。 以上を総合すると、全体としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
①オイル被覆法の縦型成膜プロセスについてはDipコーティングの成膜理論におけるEvaporationモデルに基づく解析を連携先の米国ワシントン大学(UW)の共同研究者(准教授、化学工学)と中断していた共同研究を再開する。成膜速度と積層数の関係について既存モデルをベースを本系に適用したモデル構築が可能であるかについて検証する。また、2022年度末に米国の学会発表を兼ね、先方研究室を訪問(新型コロナによって延期していた)し、対面で議論することで共同研究を推進する。 ②成膜速度の高速化:引き続き、水平型のバーコータータイプの成膜装置の実験を行うと共に、透過型顕微分光システムを用いて反射ピークの計測と顕微鏡観察により結晶化過程の詳細を調査する。引き続き、Landau-Levichモデルを参考にしながら、系統的な実験を積み重ねる。さらに、このエタノール系懸濁液による高速成膜系に関してもUWの准教授とモデル構築のための議論を開始する。また、オイル被覆法で作製したコロイド結晶薄膜のモルフォロジーや結晶性の両者の違いについて議論を深める。 ③マイクログラビアロールの調整を含め想定した積層数の連続成膜とその結晶性評価を行い、バーコーターと同等レベルのコロイド結晶の成膜の達成を目指す。また、コロイド結晶薄膜の成膜後の固定工程についても、複数の対応策を検討している。1つめはコロイド粒子が配列した後にフッ素コーティングなどでコロイド結晶を固定する方法、2つめはシリカ粒子懸濁液に予め固定用のポリマー分子として、PVA(ポリビニルアルコール)あるいはNC(ナノセルロース)などを分散させておく方法である。分子種の選択と濃度などを最適化することで、高い結晶性を維持したコロイド結晶薄膜をPETシート表面に固定する。
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