2020 Fiscal Year Annual Research Report
インクジェット射出液滴を用いた新規反応制御技術の開発
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20H02516
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
牧 泰輔 京都大学, 工学研究科, 准教授 (10293987)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | inkjet reactor / nano particle / micro reactor / micro mixing |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はこれまでのマイクロフロー反応器の利点を生かしつつ、『拘束された微小空間利用』、『不安定物質のオンデマンド生成・活用』、そして『反応器の制約からの脱却』を目指してマイクロ液滴を生かした新たな材料創成反応プロセスの開発を目指すものである。本研究は上記の目標達成のために、①衝突挙動が混合速度に及ぼす影響の検討とモデル化、②反応場の濃度・温度・滞留時間が収率に大きく影響する粒子析出反応による液滴衝突反応システムの有効性の検証 の2項目について検討を実施する。 本年度は研究項目①について重点的に行なった。まず、飛翔速度を変更し、混合性能に与える影響を検討した。このとき正面衝突となるとなるように衝突径数は0に固定した。インクジェット装置を用いて液滴を衝突させた場合、マイクロミキサーに比べて低Re数においても混合速度を高めることできた。マイクロミキサーでは流量が大きくなると対流により流体セグメントサイズが小さくなるが、インクジェット装置では混合当初から流体セグメントサイズが液滴サイズとなっており、低Re数領域においても良好な混合性能が得られたと考えられる。次に衝突径数の影響について検討した。衝突径数の増加に伴い混合性能は一旦低下した後に向上した。これは、衝突時の液滴の変形によるもので衝突径数が大きくなると液滴の伸縮により拡散距離が増加したためと考えられる。また、液滴の速度差による影響を推知流体シミュレーションにより検討したところ、高速液滴が低速液滴の上側に衝突するときの方が,高速混合であることを示した。 研究項目②についてはAgナノ粒子の合成をモデル反応として実施した。衝突速度の増加および衝突径数の増加とともに混合が促進され粒子径が減少することを確認した。また、これまでに報告されているAgナノ粒子の報告例よりも幅広い範囲で粒子径を制御することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目①衝突挙動が混合速度に及ぼす影響の検討とモデル化 については種々の実験条件での実験と数値流体力学(CFD)シミュレーションを行い、混合速度を高める手法の開発と混合速度を予測するシミュレーションモデルの開発に成功している。 また研究項目②反応場の濃度・温度・滞留時間が収率に大きく影響する粒子析出反応による液滴衝突反応システムの有効性の検証 についてはモデル系としてAgナノ粒子の合成に成功し、混合挙動と粒子径に相関があることを明らかにした。 以上より、研究は目標達成に向けて計画通り進行しており、おおむね順調にしていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでは2つのノズルから液滴を衝突させる手法をとってきた。この手法は1ノズル+1ノズルであれば、ほぼ完全に衝突させることが可能であるが、より多くのノズルを用いた場合については制御が困難になることが予想される。したがって、本手法の利点をより簡易にかつ大量処理を実現するために1ノズルから液滴をバルク液に射出することで新たね機能性粒子の創成を試みる。
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