2020 Fiscal Year Annual Research Report
多元機能活性サイトの構築に基づく革新的触媒系の開発とその学理の深化
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20H02517
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古川 森也 北海道大学, 触媒科学研究所, 准教授 (10634983)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 合金触媒 / 脱水素 / 反応場設計 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一年度では「擬二元系合金」および「金属間化合物の表面修飾」の2つの手法を用いてだ元素合金反応場を構築し、以下の反応系において高性能な触媒を開発することに成功した。
(1)メチルシクロヘキサン脱水素 種々の二元系Pt合金Pt3M/SiO2を用いてMCH脱水素性能を試験したところ、Pt3FeがPt3Snを含む従来触媒に比べ高い活性(TOF)、耐久性を示すことを見出した。さらにFeの一部を第三金属で置換した擬二元系合金触媒を試験した結果、Znを用いたPt3(Fe0.75Zn0.25)/SiO2が本反応に極めて高い活性(TOF: Ptの3倍)、選択性(>99.9%)、耐久性を示すことを見出した。特に耐久性に関しては、400℃という厳しい条件においても大きな活性低下は見られず、また通常の運転温度(320℃)においては少なくとも50 hの間は活性低下が見られず、99%以上の高いMCH転化率を維持することが判明した。 (2)プロパン脱水素 本研究ではユニークな性質と構造を有するPtGa金属間化合物に着目し、プロパン脱水素に高い耐久性を示す触媒の開発を目指した。PtGaは熱安定性が高く、高温でも構造が変化しないという利点を持つ。またそれだけでなく、3つのPt原子からなる「Pt3サイト」と、1つのPt原子が複数のGa原子に囲まれ孤立した「Pt1サイト」、という2種類の触媒活性点が表面に存在するという特徴がある。我々は触媒表面をPbで修飾することによりこのPt3のみを選択的に被覆しPtサイトのみが機能するように調整した。その結果PtGa-Pb/SiO2触媒は従来最も高耐久、選択性的とされていたPt3Sn触媒よりも600℃において圧倒的に高い耐久性を示し、その後も96 hは活性低下が見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究で確立されつつある触媒設計の概念・技術では、通常の金属触媒材料を用いた従来技術とは一線を画す高度かつ精密な反応場設計が可能になる。それにより、二元系合金が有する触媒材料としてのポテンシャルを一層向上させる普遍的かつ応用性の高い触媒設計が達成される。本研究ではこの概念・技術を世界に先駆けて導入することで、アルカン脱水素を対象とした反応系において、従来触媒に比べ圧倒的に高性能な触媒を開発することに成功した。これらの「擬二元系合金」および「金属間化合物の表面修飾」を用いた触媒開発は、世界でも例を見ない独創的なものである。特にメチルシクロヘキサン脱水素、プロパン脱水素いずれの系においても、その成果はインパクトファクターが10を超える著名な国際誌(ACS CatalysisおよびNature Communications)に掲載され、新聞などのメディアでも報道されるなど国内外で高く評価されるとともに大きな反響を呼んだ。第一年度で既にこれだけの成果を得られたことは、当初の予想を上回る進捗状況であるといえる。 以上の理由から、本研究は、第2年度の開始時の段階において、当初の計画以上に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
第二年度では、上記の触媒設計指針を適用する反応系として、以下に示す2種の分子変換を対象とし、これまでに得られている知見等を最大限に活かした触媒設計を行う。これらの反応はいずれも、水素社会の実現や基幹化成品製造、環境浄化を推進する上で必要不可欠な触媒反応系であり、目標が達成された場合の社会的インパクトは極めて大きい。
(1)CO2を酸化剤としたプロパン酸化脱水素:本研究ではC-H活性化(Pt)とCO2活性化(Ni, Pd)のそれぞれを得意とする活性金属を設定し、さらに副反応を抑制するために活性金属アンサンブルを不活性な典型金属M(Zn, In, Ga, Sn, Pb等)で希釈する触媒設計を行う。第一年度での検討において既に、PtCoIn/CeO2の組み合わせが本反応に極めて有効であることを見出していた。第二年度では、さらに遷移金属側をPt, Co, Ni、典型元素側をGa, In, Snと更なる複合化を行い高性能化を目指す。具体的には触媒活性や耐久性の更なる向上を目指し、社会実装に耐えうるレベルの性能まで引き上げる。
(2)プロパン脱水素:これまでに見い出しているPtGa金属間化合物のPt側をPt, Co, Feで、さらに典型金属側をZn, Sn, Inでそれぞれ複合化することにより、耐久性の向上を目指す。それにより、従来の耐久性(数日程度)を超える高耐久な新規触媒を開発する。
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