2021 Fiscal Year Annual Research Report
多元機能活性サイトの構築に基づく革新的触媒系の開発とその学理の深化
Project/Area Number |
20H02517
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
古川 森也 北海道大学, 触媒科学研究所, 准教授 (10634983)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 合金触媒 / 多元素合金 / プロパン脱水素 / CO2有効利用 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) PtGa-Pb-Ca/SiO2を用いた超高耐久プロパン脱水素触媒の開発 金属間化合物PtGaには3つのPt原子からなる「Pt3サイト」と,1つのPt原子が複数のGa原子に囲まれ孤立した「Pt1サイト」,という2種類の触媒活性点が表面に存在するという特徴があり、我々は触媒表面をPbで修飾することによりこのPt3のみを選択的に被覆しPtサイトのみが機能するように調整することで,劇的に安定性を向上できることを昨年度に明らかにしていた.今年度においてはさらに本触媒にCaを添加することで,Pt1サイトの電子密度を向上させ,プロピレンの脱離促進により更なる選択性と耐久性の向上を目指した.その結果PtGa-Pb-Ca/SiO2触媒は600°CにおいてPtGa-Pb/SiO2やPtGa-Ca/SiO2に比べ高い耐久性を示し,最適条件下では1ヶ月間安定的に機能するという驚異的な耐久性を示した.
(2) CO2を酸化剤に利用したプロパン酸化脱水素への展開 プロパン脱水素における炭素析出を防ぐ手法として,CO2を酸化剤とした酸化脱水素により析出した炭素を酸化的に除去することが可能になる.また本反応はCO2の有効利用としても重要であり,工業反応をカーボンニュートラル化できるという点でも近年非常に注目を集めている.しかしながら実用レベルで有効な触媒が開発されておらず,基礎研究の域を脱していなかった.本研究では,プロパン脱水素,CO2還元,副半反応抑制にそれぞれPt,Co,Inが有効であることを見出し,これらを合金化させたPt-Co-Inナノ合金が本反応に有効であることを見出した.さらに触媒担体としてコークの酸化除去を促進するCeO2を用いることで,触媒の耐久性が飛躍的に向上することも見出した.開発したPt-Co-In/CeO2触媒は550℃でのCO2によるプロパン酸化脱水素において,活性,選択性,耐久性,CO2利用効率の全てにおいて,世界最高性能を示す極めて優れた触媒であることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
(1)の成果においては、研究者自身の過去の成果も含めた従来の触媒の耐久性が数日程度であったのに対し、1カ月にわたる驚異的な安定性を示すに至った。(本成果はAngewndte Chemie誌に掲載)
また(2)の成果においては、活性,選択性,耐久性,CO2利用効率の全てにおいて、世界最高性能を示す極めて高い触媒性能を得ることに成功した。(本成果はNature Catalysisに掲載)
これらの成果はいずれも、当初想定していた目標を大幅に上回るものであり、計画以上の進展と言って十分に差し支えないものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は対象反応において更なる金属種の最適化を検討するほか、CO2を用いたその他の反応系への展開も予定している。さらに金属だけでなく触媒担体の複合化、多元素化も考えており、これは本研究内容から派生的に生まれた新しい研究方針ともいえる。加えて、最終年度に当たって本研究内容の学術的な整理を行うべく、総説論文の執筆も予定している。以上の様に、触媒の開発には十分な成果が出ているため、その継続と共にもう一つの研究の柱である学理構築に関しても完成を目指す。
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Research Products
(15 results)