2021 Fiscal Year Annual Research Report
カルボン酸の選択的水素化によるアルコール合成用固体触媒の開発
Project/Area Number |
20H02520
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
田村 正純 大阪市立大学, 人工光合成研究センター, 准教授 (10635551)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水素化 / カルボン酸 / アルコール / 不均一系触媒 / モリブデン / 鉄 / 合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
カルボン酸の水素化によるアルコールへの選択的変換は、有用化学品であるアルコール合成のための重要な反応であり、また、カルボニル基の中でもカルボキシ基の反応性は低く水素化が難しいことから、学術的観点からも重要性が高い反応である。従って、高度な不均一系触媒の設計が求められている。既存の触媒系は、低活性、厳しい反応条件、貴金属やレアメタルの使用などの問題を抱えている。そこで本研究では、安価な金属を主活性種とした新規なカルボン酸水素化用固体触媒の開発を目指した。 昨年度までの研究から、白金(Pt)とモリブデン(Mo)の組み合わせたMo-Pt/SiO2触媒がカルボン酸の水素化に有効であり、高温還元によってMoPt金属間化合物が形成することを見出し、それが高活性発現に重要な活性サイトとして機能していることを明らかにしてきた。今年度においては、Mo-Pt/SiO2触媒の速度論解析を行い、昨年度までの触媒構造解析と組み合わせて考察することで、触媒活性種の解明、反応ルートの解明、反応メカニズム解析を行った。さらに有効な固体触媒系を開発すべく、安価な金属種(非貴金属)のスクリーニングを行った。その結果、FeOxを金属種とした触媒がカルボン酸の水素化反応に有効であることを見出した。特に、第二金属としてRuを組み合わせた触媒系FeOx-Ru/SiO2触媒がカルボン酸の水素化に140℃といった低温条件において、高活性、高選択性を示すことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに見出された、カルボン酸の水素化に有効な白金(Pt)とモリブデン(Mo)の組み合わせたMo-Pt/SiO2触媒の研究に関して、反応実験検討を行い、触媒構造解析の結果と合わせることで、活性種構造の解明、反応メカニズム解析を行った。また、その結果を論文にまとめた(現在、査読中)。また、今年度の研究において、他の安価な金属種の可能性についての検討を行った結果、FeOxを主金属とした触媒がカルボン酸の水素化反応に有効であることを見出している。特に、第二金属としてルテニウム(Ru)を組み合わせた触媒系FeOx-Ru/SiO2触媒が140℃といった比較的低温条件において、カルボン酸の水素化に高活性、高選択性を示すことを明らかにした。ルテニウムや酸化鉄だけでは活性がほとんどみられないことから、ルテニウムと鉄の界面が活性サイトになっていると考えられる。また、Fe種担持量依存性の検討から、最適な鉄種担持量が存在することから、カルボン酸の水素化に最適な活性種サイズ、もしくは鉄構造が存在していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの結果から、新たなFeOx-Ru/SiO2触媒がカルボン酸の水素化に有効であることを見出したが、触媒構造、反応メカニズムに関してはまだ明らかになっていない。そこで、今年度では、触媒構造解析及び速度論解析を主に行い、触媒活性種及び反応メカニズムの解明を行う。触媒構造解析に関しては、ルテニウムは金属状態で機能していると考えられるが、鉄種はどのような酸化状態で反応を進行させているかはわかっていない。鉄種の状態が高選択性の鍵になっていると考えられるため、重点的に解明を行っていく。触媒解析としては、XRD, XPS, XAS, TEMなどの分光学的解析を組み合わせて、金属種のサイズ、酸化状態、金属間の配置などを明らかにしていく。また、速度論解析としては、FeOx-Ru/SiO2触媒及び比較としてRu/SiO2触媒を用い、反応の重要要素である水素圧依存性、基質濃度依存性や温度依存性(活性化エネルギーや頻度院因子)などを評価し、反応機構を明らかにしていく。
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