2020 Fiscal Year Annual Research Report
薬物徐放可能な抗血栓性トーラス微粒子の開発による肝硬変治療
Project/Area Number |
20H02530
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 大知 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (50447421)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉江 建一 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任教授 (10543316)
大河内 仁志 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 細胞組織再生医学研究部長 (30185235)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドラッグデリバリー / 肝硬変 / 線維化 / 微粒子 / ハイドロゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
肝硬変はコラーゲンなどの細胞外マトリックスが過剰に蓄積される線維化疾患である.肝硬変そのものを薬物治療する方法は存在せず,特に患者が増加している非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)起因の肝硬変には優れた治療法がなく,新たな治療法が期待されている.本研究では,MSC(間葉系幹細胞)の経肝動脈的細胞投与治療に創発され,血流を遮断しないで血管内エントラップメントが可能なトーラス状の新しいDDS(ドラッグデリバリーシステム)のキャリアを開発し,肝動脈投与で肝臓血管網内に広範囲にエントラップさせ,ECM分解酵素や抗線維化薬を局所徐放可能な新しいDDSの方法論を提案し確立することを目標としている. 本年度は、Vortex Ring Freezing法によるトーラス微粒子の開発を行った。まず、既報に従い(Minglin Ma et al. Nature Communications 2016(7) 12401)自作のエレクトロスプレー装置を作製し,AL(アルギン酸)水溶液をエレクトロスプレー法により高速で金属イオン水溶液液面に衝突させ,Vortex Ringを形成すると同時にイオン架橋により形状を固定化(Freezing)し,トーラス微粒子を得た.本手法により,AL分子量や濃度・流速・電圧・シリンジ・架橋剤の影響を精査し,先行研究では実現できていなかった外径200マイクロメートル以下のトーラスゲル微粒子を得ることに成功した。さらにこの粒子に対して、ヘパリンやドキソルビシンといった様々な薬物の徐放挙動を測定し、薬物徐放微粒子としての性能を始めて示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、予定していた通り、Vortex Ring Freezing法によるトーラス微粒子の開発に成功した。自作のエレクトロスプレー装置を作製し,AL(アルギン酸)水溶液をエレクトロスプレー法により高速で金属イオン水溶液液面に衝突させ,Vortex Ringを形成すると同時にイオン架橋により形状を固定化(Freezing)し,トーラス微粒子を得た.本手法により,AL分子量や濃度・流速・電圧・シリンジ・架橋剤の影響を精査し,先行研究では実現できていなかった外径200マイクロメートル以下のトーラスゲル微粒子を得ることに成功した。さらにこの粒子に対して、ヘパリンやドキソルビシンといった様々な薬物の徐放挙動を測定し、薬物徐放微粒子としての性能を始めて示した。 さらにCFDによるトーラス微粒子充填層中の流動状態の解析を実施し、様々なサイズや構造のトーラス微粒子を充填させた分岐流路内に,液体のみあるいは粒子懸濁液を通過させた際の流動状態を,COMSOLを用いてCFDにより計算し,粒子設計への指標を提示し、予定通りモデリング計算を行った。 以上、全て予定した実験を完遂し、結果も想定通りのもの、あるいはそれを凌駕する結果が得られ、おおむね順調に推移している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、抗血栓性を持ったヘパリンを修飾したアルギン酸誘導体を合成し,抗血栓性のトーラス粒子とする.申請者が持つ止血材開発で蓄積した凝固系評価の知見を活かし,新鮮凍結血漿や全血を用いた凝固試験,血小板凝集試験等で,ヘパリン導入による抗血栓性を評価する. また健常マウスへの投与と血栓形成防止効果を実施する。マウスモデルでは,経脾臓投与で肝臓にビーズが送達できること期待され、完成したトーラス微粒子を逐次健常マウス肝臓への投与し,肝臓切片の病理解析を行う. さらにCFDに関しては、トーラス微粒子を充填させた分岐流路内に,液体のみあるいは粒子懸濁液を通過させた際の計算をCOMSOLを用いてCFDにより計算してきたが,さらに近傍組織への薬物の反応拡散移流を取り込んだモデルに発展させる.
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