2021 Fiscal Year Annual Research Report
Visualization and evaluation of physiological responses by membrane dynamics
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20H02536
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
高木 昌宏 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (00183434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下川 直史 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 講師 (20700181)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 生理活性物質 / 膜ダイナミクス / リポソーム / スティンギングテスト / アミノ酸系界面活性剤 / 動物実験代替法 |
Outline of Annual Research Achievements |
刺激性をもつ化学物質の評価方法として、ウサギの眼に試験物質を滴下して評価するドレイズ試験がある。この方法では、動物愛護の観点や定量性の低さなどから評価方法としては十分ではない。我々の研究室では、生体模倣膜と各種生理活性物質の相互作用が引き起こす形態変化に着目して、刺激性評価系を構築する研究を行っている。本研究では、リポソームの形態変化と刺激の種類の関係や、刺激を軽減させると言われている両性界面活性剤等の添加、さらには実際のヒトの感じる刺激について実験を行い、膜ダイナミクスと生理活性の関係を考察する。 【方法】不飽和脂質DOPC、蛍光試薬として、Rhodamine-DHPEを用いて、静置水和法でリポソームを作製した。リポソームを作成後、被検物を滴下、共焦点レーザー顕微鏡で、膜ダイナミクスの観察を行った。界面活性剤として、Sodium Lauroyl Glutamate、両性界面活性剤としてCocamidopropyl Betaine等を、様々な濃度で混合し使用した。スティンギングテストは、精製水を浸透させたティッシュで後頸部をふき取った後、サンプルを浸透させた不織布ガーゼを後頚部にサージカルテープで貼付、その後ヒアリングを行って実施した。 【結果・考察】リポソーム試験の結果ラウロイルグルタミン酸Naは、ココイルグルタミン酸Naよりも刺激の強い膜ダイナミクスを示す事が分かった。スティンギングテストの結果からも、ラウロイルグルタミン酸Naは、ココイルグルタミン酸Naより刺激が強いことがわかった。両性界面活性剤と混合することで、刺激スコアがやや下がることが確認できた。ラウロイルグルタミン酸Naよりココイルグルタミン酸Naの刺激が弱いのは、ココナッツオイルに含まれているC12以外の脂肪酸が影響していると考えられた。また、リポソーム試験とスティンギングテストの結果は、一致する点が多かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リポソームを用いた動物実験代替法については、ほぼ評価系ができつつあり、ドレイズ法やヒトスティンギングテストとの対応についても、充分に納得できる状況にある。画像解析についても、自動的に動画を取り込むシステムなどができつつあるが、ディープラーニングを実施するには至っていない点については、改善を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
【1】生理活性物質の引き起こすダイナミクス解析(定性的解析)膜ダイナミクス観察を、引き続き行う。さらに、分子レベルでの挙動を考察するため・Vin = 界面活性剤侵入速度・VFlip-Flop=内外層間のFlip-Flop速度・Vout=ミセル形成して可溶化する速度の3つの速度を基に膜ダイナミクスのメカニズムについて分子レベルで考察を深める。また、内層に蛍光標識を導入した非対称膜を作製し、膜障害に最も影響すると考えられるVFlip-Flop速度を測定する。 【2】生物物理学的・数理学的解析(定量的解析)(2-1)ドメイン縁ゆらぎの解析 脂質混合系における膜ドメインのゆらぎ解析から、界面張力変化を求める。膜ドメインは、膜面内における生理活性物質の吸着・局在に寄与する。(2-2)粗視化シミュレーション 実際の細胞膜は、リン脂質の組成が複雑で、またコレステロールなどの重要な膜成分も存在している。そこでラフトを想定した複合脂質膜についてシミュレーションを行う。 【3】統計的大規模データ解析:動画解析・深層学習・AIによる精緻化(統計的解析)静止画像解析で培った技術を、時間経過に伴う連続的な情報として、動画解析に発展させる。我々の目指す評価系は、情報量が増えるほど精度が高まる。つまり、大規模情報処理・機械学習に理想的な系である。時系列画像処理と深層学習の融合により、自動化、高精度化を目指す。
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Research Products
(9 results)