2020 Fiscal Year Annual Research Report
Construction of a synthetic complex microbial system for chemical production
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20H02544
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
花井 泰三 九州大学, 農学研究院, 教授 (60283397)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 合成生物学 / 人工遺伝子回路 / 合成代謝経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、すでに回路設計と動作確認が終了した糖化・溶菌株の問題点を明らかにし、より汎用性の高い株の作成を目指して研究を進めた。作成済みの糖化・溶菌株は、周囲の温度の影響を大変受けやすく、エアシェイカーで、同じ培養条件(誘導剤濃度、培地組成 など)で3個のフラスコを用いて実験を行うと、これらすべての実験結果が大きく異なるという問題点が存在した。装置内で比較的均一な温度制御が出来るウォーターバス内で往復振とう培養を行うことで、3個のフラスコで同じ実験結果を得ることに成功している。この原因は、luxシステムのluxIタンパク質の活性が、20度後半から30度までは高い活性を保つが、30度から急速にその活性が下がり、我々が設定温度としている37度ではほとんど活性を失っているためと考えられた。そこで、培養温度を30度に変更したところ、エアシェイカーでも実験結果は安定したが、luxIの活性が高くなったため、非常に早いタイミングで溶菌することとなった。溶菌タイミングが早くなったことと、培養温度の低下による菌体増殖速度の低下のため、溶菌時の菌体密度は培養温度37度と比較して非常に低くなり、放出される酵素量もとても少なくなってしまった。結果的に、糖化に十分な酵素量を放出できないという新たな問題が発生した。そのため、RBSカリキュレーターを用いて、luxIの翻訳効率に関連したRBSをより低効率となるように設計し、設計に基づいた糖化・溶菌株を作成することとした。その結果、培養温度30度で、安定して溶菌し、かつ、ある程度の酵素量を放出する株の作成に成功した。 また、物質生産株としてイソプロパノール以外に、リコピンの生産を目指し、リコピン生産のための合成代謝経路の構築を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた誘導剤濃度、培養温度、溶存酸素、初期菌体密度、RBS強度などの影響のうち、ほとんどの影響を明らかにした。特に、培養温度は、一般的な培養で用いられるエアシェーカー内部の温度分布によって、実験結果が大きく左右されるなどの問題点を明らかにし、その解決方法も示すことが出来たため、概ね順調に進展していると考えらる。
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Strategy for Future Research Activity |
培養温度の変更とRBS配列の再設計により、ある程度の酵素生産と放出には成功した。ただし、さらなる酵素量を放出させるためには、さらに溶菌までのタイミングを遅らせる必要があると考えられた。現在の設計ではIPTG濃度を減少させることで、溶菌タイミングをある程度遅らせることが出来るが、それ以上に減少させると、溶菌そのものがおこらないと言うことがわかっているため、今後、本システムの大きな改良を考える必要があると考えている。 また、合成代謝経路によるリコピン生産にも成功したが、他の研究グループによる生産量と比較して、非常に生産量が低いため、原因解明と改良が必要と考えている。また、リコピン生産には、遺伝子発現量が多すぎると細胞増殖に阻害的に働く可能性が考えられるために、luxシステムで遺伝子発現をコントロールする予定であるが、luxシステムは一度遺伝子発現が開始するとポジティブフィードバックループが形成され、遺伝子発現量が非常に強くなるため、luxシステムに何らかの改良が必要であると考えられた。
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Research Products
(1 results)