2020 Fiscal Year Annual Research Report
Optical Manipulation at Interfaces
Project/Area Number |
20H02550
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
坪井 泰之 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (00283698)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 油水界面 / プラズモン / 光ピンセット / 蛍光顕微鏡 / ナノ粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)ブラックシリコン光ピンセットの開発に成功した。この特徴・性能は以下に集約される。 <強い光捕捉力> メガワット/cm2近い強度の光照射でも、温度上昇は数K程度であり、熱の影響は無視できる。このため、プラズモン光ピンセットを凌駕する高い捕捉力を発揮できる。 <ナノ粒子の大量捕捉と単一粒子捕捉> 微粒子の捕捉において、例えば一粒ごとの分光分析を行う場合は「単一ナノ粒子の捕捉」ができる光ピンセットが好ましく、微粒子をたくさん集めて分光シグナルの増大や結晶感度の化学プロセスを誘起したい場合は「大量の微粒子の捕集」ができる光ピンセットが好ましい。私たちはナノ構造を制御すれば、どちらにも対応できることを明らかにした。さらに、捕捉粒子を一次元または二次元的に配列できる。 (2)レーザーフリーなブラックチタン光ピンセットの開発に成功した。 一連の研究にヒントを得て、表面にナノ構造を付与したチタン結晶(ブラックチタン)に、水銀ランプから紫外線を照射すると、極めて弱い光でも、光捕捉を行えることを見出した。捕捉対象に、直径20 ~ 500 nm の蛍光染色ポリスチレン微粒子を用い、水銀ランプの紫外線(波長370 nm)アメタルに弱く集光した(I = 5 W/cm2)。比較のため、表面が平滑なシリコン結晶、ナノ構造シリコン結晶、平滑なレアメタル結晶を用いた捕捉も試みた。その結果、ナノ構造を付与したレアメタル結晶上でのみ、明確な微粒子の捕捉が確認された。光照射を中止すると、微粒子は速やかに開放された。すなわち、この現象は光で駆動する可逆現象である。このように、従来よりも百万分の一以下の弱い光強度で光捕捉に成功した。現在、その機構を解析しているが、これはレーザーを用いない光ピンセットの初めての例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず、ブラックシリコン光ピンセットの開発は計画通り順調に進んでいる。その成果は以下の論文にて報告している。 "Optical Trapping of Polystyrene Nanoparticles on Black Silicon: Implications for Trapping and Studying Bacteria and Viruses" Sawa Komoto, Tatsuya Nagai, Ryota Takao, Kenta Ushiro, Mitsuhiro Matsumoto, Tatsuya Shoji, Denver P. Linklater, Saulius Juodkazis, and Yasuyuki Tsuboi ACS Applied Nano Materials 2020 3 (10), 9831-9841. 次に、ブラックチタン光ピンセットでは、予想をはるかに超える性能が得られた。すなわち、従来よりも遥かに弱い光強度、すなわちインコヒーレントな水銀ランプの光でナノ粒子を光捕捉できることに成功した。現在、論文を投稿中(in revision)である。このように、「インコヒーレント微弱光によるナノ粒子の光捕捉」に初めて成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)ブラックシリコン光ピンセットに関して: 高効率なナノ粒子の光捕捉に成功しているので、次のチャレンジは応用、それも「物質科学応用」を目指す。分子集合体の形成やタンパク質線維形成、蛍光カラーチューニングの予備実験を開始している。 (2)ブラックチタン光ピンセット: この「インコヒーレント微弱光によるナノ粒子の光捕捉」がナノ粒子一般に適用できるか検証することが第一のタスクであると認識している。また、理論的な説明もクリアしたい。 (3)液/液界面光捕捉: 本年度は、油水界面光捕捉の研究も推進する。油水界面におけるナノ粒子の光捕捉の効率や特徴を明らかにし、化学反応応用への展開を目指す。
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