2021 Fiscal Year Annual Research Report
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20H02555
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
笹倉 弘理 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90374595)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
足立 智 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10221722)
小田島 聡 北海道大学, 電子科学研究所, 特任准教授 (20518451)
鍜治 怜奈 北海道大学, 工学研究院, 助教 (40640751)
熊野 英和 新潟大学, 自然科学系, 教授 (70292042)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 量子情報 / 量子通信 / 半導体量子ドット / 量子光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は量子ネットワークの形成に向けた基盤技術として, 現行の光通信網と整合性が良く, 統計的・エネルギー揺らぎを抑制した量子ドット内蔵型光ファイバーデバイスを開発し, 伝送路の不安定性に対する耐性に優れたエンタングルメン伝送路の揺らぎの影響を受ける光子一つと真空場で形成されるエンタングルメントを介した量子テレポーテーションの実験を通して, 伝送路の揺らぎに対する忠実度の影響を精査し, 現行の光通信網を介した量子ノード間制御への展開を図るものである. 初年度及び2年目の実施計画は, 1. クロスニコル型量子ドット結合型光ファイバーデバイス(QDinF)の開発, 2. ナノピラー形状の最適化による単一偏波ファイバーへの光学結合効率の向上と境界面での偏光乱れの抑制, 3. 共鳴励起によるエネルギー揺らぎを抑制した単一光子生成手法の確立である. 初年度に引き続き, 偏光選択が可能な半導体量子ドット光ファイバーデバイスの開発を実施した. 偏波面を直交させた単一モード偏波ファイバー対に半導体量子ドットを装着した際に生じる消光比の低下を抑制するため, 半導体量子ドット成長膜表面へのワイヤーグリッド偏光子の形成を行った. 消光比の向上には, 偏光子の多層化が有効であることが予想されることから, 本年度は2層構造のワイヤーグリッドを作製し, 消光比を実測した. 典型的なインジウムヒ素/ガリウムヒ素量子ドットの発光波長である1マイクロメートルを対象として, ワイヤーグリッドを構成する金属の厚さ・幅, 周期, ワイヤーグリッド層間の厚さなどの構造を厳密結合波解析法による数値シミュレーションと実測結果を踏まえ検討した. ガリウムヒ素表面に2層構造のワイヤーグリッドを形成した結果, 500:1の消光比を実測した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した, 前半2年間の実施項目である1. クロスニコル型量子ドット結合型光ファイバーデバイスの開発, 2. ナノピラー形状の最適化による単一偏波ファイバーへの光学結合効率の向上と境界面での偏光乱れの抑制, 3. 共鳴励起によるエネルギー揺らぎを抑制した単一光子生成手法の確立に着手し, QDinFデバイスの試作及び検証用光学系の構築を概ね予定通り実施できた. 本年度開発した偏光選択用の2層構造ワイヤーグリッドの消光比は概ね数値シミュレーションを反映したものであったが, 一方で透過率が低く, この技術的課題に対して令和2年度において半導体表面の面精度の改善手法の確立が達成できていない.
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Strategy for Future Research Activity |
2020~2021年度で着手した, クロスニコル型QDinFを用いた単一光子発生に関する結果を踏まえ, 2022年度は単一光子と真空場のエンタングルメント(SPVE)を媒体とした遠隔スピン間のエンタングルメントの形成に着手する. 4. SPVEの伝送路の不完全性に対する耐性の検証 : SPVEの伝送路の不完全性に対する耐性を, 任意の量子情報を遠く離れた空間で再生する量子テレポーテーションにおける忠実度から評価する. 相関の無い量子系として前半2年間で開発したQDinFデバイスから生成される相関の無い2つの光子を用いる. 初めに一つの経路間で光子間の不可識別性による二光子干渉が生じさせると, 真空場を介して別の経路間で位相が共有されるシングルモードテレポーテションの光学系を構築し, 零遅延時間における二つの経路間の同時計数が反相関を示すことを, 位相シフタにより変調された一次の光子相関から確認する. 忠実度をこの可干渉度から見積もる. 経路間の相対位相差の安定度が伝送路の完全性の指標であり, フィードバック系の制御パラメータの設定から位相差の安定度を調節できることを利用して, 忠実度の変化からSPVEの耐性を評価する. 5. SPVEを介した遠隔スピン間のエンタングルメントの形成 : 電子をドープした半導体量子ドット(QD)を用い, 実空間で離れた局在電子スピンを制御対象として用いる. 局在電位スピン間をSPVEを介してエンタングルさせる. 本項目の実施にあたり制御対象となるQDの内部エネルギー制御, 核スピンバスノイズによる電子スピンのデコヒーレンスの抑制が必要となる. SPVEと制御対象であるQDの負の荷電励起子の間にエネルギー差があると結合効率が低下し, エンタングルメント形成の弊害となる. この課題に対しピエゾ素子を用いた歪印加によるチューニングを行う.
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