2020 Fiscal Year Annual Research Report
単層カーボンナノチューブにおける励起子エンジニアリング
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20H02558
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
加藤 雄一郎 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (60451788)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ナノチューブ・グラフェン / 光物性 / ナノ構造物性 / ナノ物性制御 / ナノマイクロ物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、主として有機分子を用いた励起子ポテンシャルの形成による緩和過程の制御に取り組んだほか、六方晶窒化ホウ素とカーボンナノチューブの相互作用を利用した励起子制御の可能性を調査した。 有機分子を用いた励起子ポテンシャルの形成では、周囲の物質の誘電率にカーボンナノチューブの励起子エネルギーが依存することを利用するため、局所的に有機分子を付着させる方法を検討した。蒸着により架橋カーボンナノチューブの表面にアントラセン、ピレン、ペンタセン、コロネンなどの有機分子を吸着させ、フォトルミネッセンスによる分光イメージングや励起分光による調査を進めた。励起子エネルギーの低下により分子吸着が確認でき、分光イメージにより分子吸着の均一性を評価できることが分かった。電子顕微鏡による評価も併用することで、分子種によって全く吸着しない場合や不均一に吸着する場合など吸着の様子が異なることが明らかとなった。特にペンタセンの場合にはナノチューブ上にナノ粒子を形成することを見出した。このようなペンタセン装飾カーボンナノチューブに対してカイラリティ依存性や時間分解分光などさらなる調査に着手した。 六方晶窒化ホウ素とカーボンナノチューブの相互作用の調査では、架橋カーボンナノチューブ上に六方晶窒化ホウ素を転写し、励起子物性への影響を調査した。励起子エネルギーが大きく低下し、発光強度は半分程度となるものの発光ピークの線幅は同程度であることが、フォトルミネッセンス励起分光測定により明らかとなった。カイラリティ依存性については、単一の架橋ナノチューブに対しての測定を繰り返したほか、六方晶窒化ホウ素上に多数のカーボンナノチューブを転写して統計的な調査も進めた。その結果、励起子エネルギーの変化は窒化ホウ素の誘電率から期待される誘電遮蔽効果より大きいことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、単層カーボンナノチューブにおける励起子の励起・緩和・解離の各過程を制御する手法を実験的に検証し、また、未解明の励起子物性現象を調査し理解することで、さらに新たな制御手法の開拓へとつなげることを目的としている。 今年度は、誘電遮蔽を利用した励起子ポテンシャル形成に必要となる局所的な有機分子吸着条件が見いだせたほか、評価手法も確立できた。また、六方晶窒化ホウ素とカーボンナノチューブの相互作用を調査し、励起子エネルギーの大きな変化が起きることを確認できているほか、多数のカーボンナノチューブを測定することで統計的な知見も得ている。以上のように、励起子制御手法の実験的検証と励起子物性現象の調査ははおおむね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き有機分子を用いた励起子ポテンシャルの形成による緩和過程の制御に取り組むほか、微小共振器による量子電気力学効果を利用した発光緩和の制御と電界効果による励起子生成にも着手する。 有機分子を利用した励起子ポテンシャルの形成では、今年度得られた知見に基づき、フォトルミネッセンス分光や時間分解測定を用いて、ペンタセン装飾カーボンナノチューブにおける励起子移動や単一光子発生について調査を進める。周囲の誘電率が高いほど励起子エネルギーが小さくなるため、ペンタセン粒子が付着した部分の励起子ポテンシャルは低くなり、励起子移動が生じるはずである。また、励起子ポテンシャルの形成により単一光子発生純度が高くなることが期待される。そこで、フォトルミネッセンス測定や励起分光による評価を進め、また、光子相関測定により単一光子発生純度を計測する。 微小共振器による量子電気力学効果を利用した発光緩和の制御は、フォトニック結晶共振器とカーボンナノチューブの励起子を光結合させることで起きる発光緩和の加速の観測をねらう。架橋カーボンナノチューブと結合可能なナノビーム空気モード共振器を作製し、光結合を示すデバイスを探索して測定対象とする。時間分解測定による緩和時間の直接測定に加え、発光スペクトルの解析により共振器による発光緩和の加速を評価する。架橋カーボンナノチューブとの結合ではデバイス作製後に化学気相成長で合成するため、多数の共振器を作製して確率論的に結合を得る必要があるが、今年度調査を進めた六方晶窒化ホウ素の特性を利用し、決定論的に結合させる手法の検証にも取り組む。 また、電界効果による励起子生成の検証実験で用いる測定系の立ち上げにも着手する。フォトルミネッセンスと電気的励起による発光を検出し、スペクトルやイメージを取得するほか、時間分解測定を予定しているため、必要となる機能を導入する。
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Research Products
(16 results)
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[Presentation] Diameter-dependent photoluminescence properties in color centers of air-suspended single-walled carbon nanotubes2020
Author(s)
D. Kozawa, X. Wu, A. Ishii, J. Fortner, K. Otsuka, R. Xiang, T. Inoue, S. Maruyama, Y. H. Wang, Y. K. Kato
Organizer
The 59th Fullerenes-Nanotubes-Graphene General Symposium,
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