2020 Fiscal Year Annual Research Report
Synthesis and elementary carrier processes of highly efficient blue-emissive semiconductor quantum dots by interfacial engineering
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20H02578
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
玉井 尚登 関西学院大学, 理工学部, 教授 (60163664)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 半導体量子ドット / 青色発光 / 励起子 / フェムト秒分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
A)紫外~近赤外フェムト秒ポンプ-プローブ分光の構築 フェムト秒Ti:Sレーザーをベースとする可視領域OPAに倍波結晶を取り付け,紫外領域まで励起波長を拡張した。更に,観測系分光器にブレーズ波長300 nmの回折格子を用い白色光の紫外領域における検出効率を上げた。また回転型CaF2基板を用いて白色光を発生させたが,揺らぎを防ぐ事が難しく回転精度を大幅に上げる必要があった。そこで第2高調波(400 nm)と非線形結晶による白色光発生を試みた。その結果,安定性の面で非線形結晶による白色光が優れており,プローブ光にはこの白色光を用いる事にした。 B)青色発光CQDsの合成とキャリア素過程の解析 ZnSe CQDsをフローインジェクション法により合成した。CQDsの構造は,電顕,XRD,XRF等で行った。種々の検討の結果,亜鉛源の種類が質の高いCQDs合成に重要である事が分かった。長鎖アルキル基を持つオレイン酸亜鉛,ミリスチン酸亜鉛などよりも短鎖アルキル基を持つ亜鉛源を用いると,400 nm付近の1S遷移に由来する吸収ピークがより明確となり,質の高いZnSe CQDsが合成できる事が明らかとなった。発光スペクトルも,短鎖アルキル亜鉛を用いると半値全幅が50~100 nm程度から20 nm程度までと非常に狭くなり,発光量子収率も数%程度から30%以上へと大幅に改善された。これらの励起子ダイナミクスをフェムト秒ポンプ-プローブ分光により解析し,励起光強度依存性からZnSe CQDsのAuger再結合の粒径依存性を解析した。更に,II-VI族以外の青色発光CQDsとしてInP CQDsを調整すると共に,Gaを添加したInGaP CQDsの合成を試み,吸収・発光が短波長シフトする事を見出した。発光増強やキャリア抽出を行うためのプラズモンナノ粒子の特性もフェムト秒分光により解析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
従来の可視~近赤外領域をカバーするフェムト秒ポンプ-プローブ分光において,1)励起波長を紫外領域へと短波長化すること,および 2)プローブ光の観測波長領域を400 nm 以下にまでに展開すること,の2つが達成できた事は,本研究を遂行する上で鍵となる非常に重要な成果といえる。特に,白色光発生に関してレーザー光によって容易に損傷の入るフッ化カルシウム基板を用いるのではなく,非線形結晶の位相整合条件をずらして安定な白色光を得ると言うアイデアを思いついたことが,研究を進展させる重要な鍵となった。 もう一つの重要な成果は,種々の亜鉛源を用いる事により,質の高い青色発光CQDsを合成する為の亜鉛源を見出したことである。当初フローインジェクション法を用いて質の高い青色発光CQDsを得ようとしており,ある程度の成果は出ていたものの,CdSe CQDsやCdTe CQDsの様な安定して高い発光量子収率が得られている訳ではなかった。短鎖アルキル基を持つ亜鉛源が,質の高い青色発光CQDsに重要である事を見出したことは,今後の研究に於いて重要な成果と言える。また,InGaP CQDsの合成に関しても幾つかの課題が残っているが,ある程度の目処が立ったことは今後に大きな弾みとなった。 青色発光CQDsに関しては,今後,コアシェル構造を設計・作製する事により界面のポテンシャル構造を制御したより安定性の高いCQDsを調整する必要性があるものの,以上の様な成果が得られている事により,順調に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
青色発光半導体量子ドットに関しては,コアとなるCQDs合成が順調に進展しているので,発光波長が基本的に紫外域から400 nm近傍のZnSe CQDsだけでなく,バルクのバンドギャップがZnSe (Eg = 2.82 eV) より小さく長波長側に発光帯を持つZnTe (Eg = 2.26 eV) を用いて質の高いZnTe CQDsの合成を試みる。コロイド合成は,短鎖アルキル基を持つ亜鉛源を利用する手法を展開する。さらに,これらのCQDsをコアとし,ZnSe1-xSx,ZnSをシェルとして利用した,単層および多層構造をもち,界面のポテンシャル構造を制御した質の高いコアシェルCQDsの合成を試みる。 更に,SeやTeを含まない青色発光を示すIII-V族CQDsとして,まずInP CQDsおよびIn1-xGaxP CQDsを合成すると共に,これらのCQDsに界面エンジニアリングの手法でZnSe1-xSxおよびZnSシェルを接合し,ポテンシャル勾配の異なった新規コアシェルCQDsを合成する。 合成したこれらのコアシェルCQDsを,高分解能電顕,EDX,XRF,XRD等で解析し,その組成と構造,吸収断面積を解析する。これらCQDsのsingle excitonおよびmulti-excitonの関与するオージェ再結合ダイナミクスなどの励起子素過程を,励起光強度を変化させた紫外域フェムト秒過渡吸収分光,ピコ秒発光分光により調べ,biexcitonやtriexcitonなどの基本的な特性を解析する。また,CQDsとプラズモンナノ粒子を組み合わせ,発光増強ないしホットキャリア抽出も試み,青色発光CQDsの光物性の基礎データを得る。
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Research Products
(7 results)