2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H02602
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Research Institution | Nagoya Industrial Science Research Institute |
Principal Investigator |
浅野 秀文 公益財団法人名古屋産業科学研究所, 研究部, 上席研究員 (50262853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
羽尻 哲也 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80727272) [Withdrawn]
伊藤 孝寛 名古屋大学, シンクロトロン光研究センター, 准教授 (50370127)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ノンコリニア反強磁性体 / トポロジカルBiSb / キラル充填β-Mn構造磁性体 / スキルミオン / トポロジカルホール効果 / ローレンツ透過型顕微鏡観察 / ノンコリニア磁気抵抗効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでメモリー素子・ロジック素子開発にイノベーションをもたらす次世代材料として注目されている反強磁性体と磁気スキルミオンにおける新奇な巨大磁気伝導物性・機能の開拓を進めてきた。 反強磁性体についてはノンコリニア型Mn3GaN/重金属Ptの積層構造において、Ptからのスピン流注入によりにおける臨界反転電流密度1.5 x106 A/cm2という従来より1桁以上の低減された高効率な磁化反転の観測している。さらなる臨界反転電流密度の低 減を目指して、より効率的なスピン流生成源であるトポロジカルBiSbを用いた実験を行った。その結果,4 x105 A/cm2という超低電流密度化を達成することに成功した。 磁気スキルミオンについては、キラル充填β-Mn構造を有する強磁性Fe2-yPdyMo3N薄膜、反強磁性Co2-yPdyMo3N薄膜を用いた検討を行った。スキルミオン形成に支配的な要因となるDzyaloshinski-Moriya相互作用 (DMI) の制御の観点からPd置換量(y)依存性に着目し、磁気特性や磁気伝導特性を調べた。強磁性Fe2-yPdyMo3Nについては、y=0.32では600 Kの高キュリー温度を有する室温以上まで60 nmという微細スキルミオンが形成されることを、トポロジカルホール効果やローレンツ透過型顕微鏡観察から明らかにした。さらに、強磁性Fe2-yPdyMo3Nを下部電極としたトンネル素子におけるトンネル伝導測定から、スキルミオンに特徴的なノンコリニア磁気抵抗効果を示すことを見出した。反強磁性Co2-yPdyMo3Nについても、高品質な薄膜作製条件を探索している段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ノンコリニア反強磁性体Mn3GaNについては、室温、無磁場、105A/cm2台の低電流密度でのスピン軌道トルク磁化反転という応用上重要な要件が満たされていることを実証し、当初の目的を達成できている。 磁気スキルミオンに関しては、強磁性Fe2-yPdyMo3Nが高キュリー温度と微細(60 nm)を両立する優れた特性を有することを明らかにするとともに、Dzyaloshinski-Moriya相互作用の導出など、キラル充填β-Mn構造だけでなく磁気スキルミオンの普遍的な材料設計指針を明らかにしている。 反強磁性Co2-yPdyMo3Nについても、全てのPd置換量の範囲でキラル充填β-Mn構造単相の高品質な薄膜作製条件を確立できている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最重要課題である反強磁性スキルミオンの実現に向けて,キラル充填βMn構造反強磁性体であるCo2-yPdyMo3N薄膜をベースとした検討を行う。まず,磁気特性(キャントにより生じる磁化,反強磁性ネール温度)に対する置 換量 y 依存性を調べて,ネール温度の高い置換量を明らかにすることで,反強磁性スキルミオンの候補となる 組成領域、温度を絞り込む。反強磁性スキルミオンについては,強磁性スキルミオンと異なりその電気的検出法が確立されていないため,予想されるトポロジカルホール効果の消失(トポロジカルスピンホール効果の出現)ととともに、強磁性Fe2-yPdyMo3Nでも実績のあるトンネル素子におけるノンコリニア磁気抵抗効果を適用した解析を行う。また、キラル充填β-Mn構造磁性体におけるスキルミオン挙動を解明するために、既に強磁性スキルミオンが実証されているFe2-yPdyMo3N薄膜、およびキャント型反強磁性Co2-yPdyMo3N薄膜に対して、シンクロトロン光による磁気円二色性光電子 (XMCD) 分光、および磁気線二色性光電子 (XMLD) 分光を用いた元素分解磁気構造解析を行う。
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Research Products
(9 results)