2021 Fiscal Year Annual Research Report
自己組織化分子のスローダイナミクスが生み出す無機柔粘性結晶の開拓
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20H02604
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
片山 尚幸 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (50623758)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山内 徹 東京大学, 物性研究所, 技術専門員 (10422445)
齋藤 晃 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (50292280)
太田 幸則 千葉大学, 大学院理学研究院, 名誉教授 (70168954)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 柔粘性結晶 / 放射光X線回折 / 量体化 / 局所揺らぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
無機柔粘性結晶としての性質を示す新たな候補材料開発において大きな進展があった。スピネル化合物のLiRh2O4に着目し、放射光X線と中性子を相補的に用いた回折実験を行った。この物質は、約220 KでBand Jahn-Teller転移を示し、構造が立方晶から正方晶に変化した後、170 Kで金属絶縁体転移を示し、低温相は直方晶となることが報告されている。低温相においては電荷秩序を伴う量体化が期待され、中間温度相と高温相において柔粘性結晶的な格子ダイナミクスが期待される。我々は、放射光X線回折による平均構造解析と局所構造解析、中性子PDFによる局所構造解析を行い、得られたデータを対称性の議論をもとに整理することで、低温相における電荷秩序・量体化パターンが、有名なマグネタイトのVerwey転移を説明するために理論予想された「Anderson条件」と全く同じパターンを実現していることを明らかにした。また、この低温相の構造をベースとした放射光X線PDF解析により、中間温度相と高温相において無機柔粘性結晶を示唆すると思われる格子の低対称化が現れていることを明らかにした。以上の結果は、申請者を責任著者としてPhysical Review Bにletterとして掲載された。他にも本年度の活動の成果として、RuPやLiVSe2など、新たな候補物質を対象とした放射光X線構造研究が順調であり、柔粘性結晶候補物質となりうると期待している。以上のように、候補物質開拓には大きな成果が得られており、最終年度に向けて順調に研究が進められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、候補物質の開拓という点においては期待以上の成果が得られたと考えている。一方で、LiVS2については、単結晶試料の育成には成功したものの、柔粘性結晶状態の示す格子ダイナミクスを定量的に同定するには至っておらず、最終年度に持ち越しとなった。以上の結果を踏まえて、(2) おおむね順調に進展している。が妥当であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に明らかにした柔粘性結晶候補物質については、その特性や揺らぎの詳細を構造解析や物性測定などにより多角的に検証することで明らかにしていきたい。最終年度となることから、得られた成果については積極的に論文化を進め、本研究のまとめとする。LiVS2については、周波数依存性を伝導性から明らかにするなど、残された研究目的を実施することを目指す。
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Research Products
(14 results)