2020 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the rate limiting process of the gate-induced phase transition and the speed limit of the phase transition transistor
Project/Area Number |
20H02615
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
矢嶋 赳彬 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (10644346)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 酸化バナジウム / 金属絶縁体転移 / モットトランジスタ / ピンチオフ |
Outline of Annual Research Achievements |
金属絶縁体転移材料であるVO2をチャネルに用いた端子デバイスについて、ゲート電圧の影響は判明していたが、ドレイン電圧の影響についてはまだ調査していなかった。今後シングルドメインデバイスを調べていく上で、3端子素子としての基本的な特性が明らかになっていない状況は好ましくないと考え、ドレイン電圧の影響について系統的に調べた。実験では、様々なドレイン電圧とゲート電圧に対して、チャネル電流の値を系統的に調べ、静特性についてのデータを採取した。その結果、ドレイン電圧が0.1V未満の時は、ドレイン電圧に比例してチャネル電流が増加する線形特性が得られたが、0.1Vを超えると転移点近傍でチャネル電流が飽和するピンチオフに類似の効果が見られた。相転移トランジスタでピンチオフのような効果を観察したのは本結果が初めてであり、本3端子デバイスの動作原理を明らかにする重要な手掛かりとなる。さらに0.1V以上のドレイン電圧を印加した状態でゲート電圧を大きくしていくと、相転移の不均質性が抑制されて不連続な急峻な転移が観察された。これはドレイン電圧を印加することで、転移点近傍のみでジュール熱が活性化し、金属転移の際に雪崩効果をもたらしたためである。このように、VO2チャネルの3端子素子について、ゲート電圧とドレイン電圧の効果について統一的なモデルを構築することに成功した。さらにゲート電圧による電子蓄積効果と、転移点近傍で露わとなるジュール熱効果とを考慮した、VO2チャネル3端子デバイスのデバイスモデルを構築し、実験結果を全て定量的に再現することに成功した。本結果は、相転移材料をチャネルとする3端子デバイス(モットトランジスタ)の研究のマイルストーンとなるものであると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3端子素子としての統一的なモデルを明らかにすることができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初はシングルドメインデバイスを作製して研究を進める予定であったが、本年度の研究をとおして、まだマルチドメインの大きいサイズのデバイスについて基本的な特性を明らかにできておらず、このままシングルドメインの研究を初めても比較対象がなく本質を見極められないのではないかという懸念が生じた。そこで今後はまず、マルチドメインのデバイスを用いて、ゲート電圧印加に対する相転移の速度を明らかにし、ゲート電圧誘起相転移のダイナミクスについて普遍的なモデルを構築することを目指す。
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Research Products
(2 results)