2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of interface magnetism in topological insulator/ferromagnetic material and development for high-temperature quantum anomalous Hall effect
Project/Area Number |
20H02616
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋山 了太 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (40633962)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / トポロジカルホール効果 / ヘテロ構造 / 分子線エピタキシー / スキルミオン / 量子異常ホール効果 / 強磁性 / ジャロシンスキー-守谷相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では強磁性をトポロジカル絶縁体表面に導入して起こる様々な効果を観測することが狙いである。特に試料端に量子異常ホール効果によってカイラルエッジ状態が誘起されたり、表面に強磁性渦のスキルミオンが誘起されることが期待できるため、そのような新奇状態について調べていきたい。意義としては、前者はエネルギー無散逸スピン偏極伝導となるため、低消費電力スピンデバイスへの応用が期待でき、後者はトポロジカルにnontrivialであることが期待されるため、外乱に頑丈なスキルミオンメモリなどが期待できる。また、強磁性とトポロジカル状態の組み合わせは、物理現象としても解明すべきことが多く基礎学理構築上も重要である。そして更に発展形として、本研究ではトポロジカル結晶絶縁体を用いた量子異常ホール効果の観測も重要な目的としている。本研究でベースとする物質の一つが、真性自己形成強磁性トポロジカル絶縁体(FMTI)であるMn(Bi,Sb)2Te4であり、これはBiとSbの組成比xを調整することでフェルミ準位が制御可能なFMTIである。本研究ではxを系統的に振り物性の変調を調査したところ、x=0.55でフェルミ準位が電荷中性点付近であることが分かった。これはディラックコーンに開くギャップ付近であることと対応しており、ギャップ中状態であるカイラルエッジ状態や、ギャップ付近に存在するカイラルスピン構造を電気伝導で見ることができると期待される。FMTIの表面状態を観測するため、試料構造はFMTI/TI/FMTIとした。すると低温でトポロジカルホール効果と思われる「こぶ」がホール抵抗に出現した。これはFMTI表面に現れたスキルミオンによって誘起されたと考えられ、実際こぶの高さがTIスペーサー層に依存することを見出し、これは二つのFMTI同士のカップリングが変化しスキルミオン形成に影響を与えるためと判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では今も様々な実験結果が得られており、研究展開の観点から当初予想したよりも進捗が大きい。本研究ではMn(Bi,Sb)2Te4という真性自己形成強磁性トポロジカル絶縁体薄膜を開発し、それを用いたMn(Bi,Sb)2Te4/トポロジカル絶縁体(Bi,Sb)2Te3/Mn(Bi,Sb)2Te4というヘテロ構造を設計・作製し、さらにBiとSbの組成比の精密調整によってそれにおけるフェルミ準位の調整に成功した。さらに上記ヘテロ構造の(Bi,Sb)2Te3スペーサーの膜厚を制御することで、この系で世界で初めてのスキルミオンの観測に漕ぎつけることができた。このスキルミオンは従来報告されていたよりも1/10程度の磁場で生成することが可能で、将来的に書き換え容易な磁気メモリなどへの展開が考えられる。これらの成果はNano Letters誌において発表しプレスリリースも行った。この内容は論文誌の他に各種国内・国際会議での招待講演でも広く発表している。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、真性自己形成強磁性トポロジカル絶縁体を題材とした研究は世界的に盛んに行われているが、我々はMn(Bi,Sb)2Te4において先んじてBi/Sbの比率によって結晶構造や強磁性の特性に大きく影響することも見出しており、これについても系統的調査の後に成果発表する予定である(日本物理学会では発表済み)。また独自の独立駆動4探針STM装置を用いて、カイラルエッジ伝導を観測することも計画しており、探針距離を小さくすることで不純物効果を抑えることが可能と予期され、これが可能となれば量子異常ホール効果の観測温度の向上や、カイラルエッジ状態の空間分布を電気的にマッピングできると期待している。カイラルエッジ状態は、エッジに存在するとは分かっているが、具体的にどの程度の実空間スケールでエッジ状態が形成されているのかについても分かっておらず、そういった基礎知見の蓄積も重視していきたい。また、トポロジカル結晶絶縁体系での量子異常ホール効果の実現に向けても研究を計画している。これが可能になれば世界初のコントローラブルマルチチャネルのエネルギー無散逸トポロジカルエッジデバイスができると期待される。
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[Presentation] Caがインターカレートしたグラフェンにおける2重ディラックバンドと層間電子状態2022
Author(s)
一ノ倉聖, 德田啓, 福嶋隆司朗, 堀井健太郎, 遠山晴子, 秋山了太, 出田真一郎, 田中清尚, 清水亮太, 一杉太郎, 長谷川修司, 平原徹
Organizer
日本物理学会秋季年会 オンライン開催
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[Presentation] SiC 基板上グラフェンにおけるCa インターカレート誘起超伝導2022
Author(s)
遠山晴子, 秋山了太, 一ノ倉聖, 橋爪瑞葵, 飯盛拓嗣, 遠藤由大, 保原麗, 松井朋裕, 堀井健太郎, 佐藤瞬亮, 平原徹, 小森文夫, 長谷川修司
Organizer
日本表面真空学会関東支部セミナー「表面科学と原子層科学のエッジ」
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[Presentation] Caインターカレート誘起フリースタンディンググラフェンにおける構造と超伝導の相関2021
Author(s)
遠山晴子, 秋山了太, 佐藤瞬亮, 遠藤由大, 保原麗, 松井朋裕, 福山寛, 堀井健太郎, 橋爪瑞葵 , 一ノ倉聖 , 平原徹, 飯盛拓嗣, 小森文夫 長谷川修司
Organizer
日本表面真空学会 2021年度関東支部講演大会
Invited
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[Presentation] SiC基板上のCaインターカレートグラフェンにおける超伝導2021
Author(s)
遠山晴子, 秋山了太, 橋爪瑞葵, 一ノ倉聖, 飯盛拓嗣, 松井朋裕, 堀井健太郎, 佐藤瞬亮, 保原麗, 遠藤由大, 福山寛, 平原徹, 小森文夫, 長谷川修司
Organizer
日本物理学会秋季年会 オンライン開催
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