2020 Fiscal Year Annual Research Report
原子分解能AFMによる溶融金属/固体界面現象の3次元解析
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20H02619
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
一井 崇 京都大学, 工学研究科, 准教授 (30447908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
天野 健一 名城大学, 農学部, 准教授 (30634191)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 溶融金属 / 原子間力顕微鏡 / 走査プローブ顕微鏡 / 固液界面 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、溶融金属/固体金属界面に形成された合金について、原子間力顕微鏡 (AFM) による溶融金属/合金界面の原子スケール分析を目的としている。2020年度は、一井はまず、適用可能金属種の拡大のため、温度可変システムをAFMに組み込み、室温より高い温度域での動作について検証を行った。本研究で用いているAFMフォースセンサは音叉型水晶振動子をベースとしたセンサであり、一般のAFMで用いられる、いわゆるカンチレバーとは方式が異なる。水晶の圧電性を利用した電気検出のため、外部の電気ノイズの影響を受けやすい。そこで、低ノイズ電源を用いたオープンループ方式の温度可変システムを構築した。AFMフォースセンサの熱振動スペクトル測定により、160 ℃までは安定動作することが確認された。これはインジウムの融点よりも高く、インジウム中での分析可能性が示された。 また、温度可変システムの開発により、溶融ガリウム中における金ガリウム合金溶融過程の直接分析にも取り組み、nmレベルの分解能で溶解過程をin situ分析することに成功した。金ガリウム合金は室温での溶融ガリウム中ではファセット面を露出した結晶構造が確認されていたが、温度を上昇させると、単純に固体合金が溶解・消失するのではなく、その表面のファセットが消失し、丸みを帯びた形状を介して溶解することが明らかとなった。こうした現象は状態図では確認することができず、本手法の有用性が示された。 また、天野は、AFM由来のフォースカーブを再現するために、自由電子モデルに着目した量子力学理論や液体の統計力学理論による計算を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題のベースとなるAFMに最適な温度可変システムを開発し、その動作検証を行い、溶融金属中でのAFMフォースセンサの動作温度範囲を確定した。さらに、本システムを用い、溶融金属中における固体合金の溶融過程のin situ分析にも成功し、本システムの有用性も確認された。また、溶融金属中におけるフォースカーブ解析においても、大きな進展が見られ、研究は順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
代表者:一井は、開発した温度可変システムを用い、まず溶融金属中における固体合金の溶融および析出過程のin situ分析に取り組む。金属の溶融・析出は金属工学の根幹の一つであり、従来この分野にAFMはほとんど寄与できなかったが、この分野におけるAFMの新たな適用可能性を示す。また、160℃までの動作が可能であることが示されたことから、インジウム中でのAFM分析についても実証実験に取り組む。分担者:天野は引き続き、AFMフォースカーブ再現のための理論計算に取り組む。
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