2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of tip-enhanced and time-resolved THz nanospectroscopy
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20H02625
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
早澤 紀彦 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (90392076)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 先端増強 / テラヘルツ分光 / 近接場 / 時間分解 / 顕微分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
高空間分解能を特徴とする走査プローブ顕微鏡(SPM)と高時間分解能・化学感度を特徴とするテラヘルツ(THz)科学及び分光の融合により、高空間分解能かつ高時間分解能・化学感度を有する新規ナノ分光法の開発を進める。本課題は、3つのシステムを統合開発する。即ち、1)SPMレーザーTHz発光分光(SPM-LTEM)、2)SPM THz時間領域分光(SPM-THz-TDS)、これらを融合した3)SPM光励起THzプローブ分光(SPM-OPTP)である。 1)~3)の装置を同一チャンバーシステムにより構築するよう設計を行った。本システムは、福井大学遠赤外領域開発研究センター(令和元年度より本課題に関連する共同研究契約を締結)で開発した光伝導アンテナ(PCA)をTHz発光及び検出素子として用いたTHz-TDSと、qPlusセンサー方式(金探針を接着)の非接触AFMにより構成した。qPlusセンサーへの金探針接着の顕微鏡下でのプロトコルを構築し、qPlusセンサーを繰り返しリサイクルし使用可能とした。また、通常のTHz-TDSでは、光チョッパーを用いた照射光の変調によりロックイン検出を行うが、本システムでは、qPlus方式金探針の試料垂直方向への励振により近接場THz信号に変調を与え、これをロックイン検出することとし、近接場でのLTEM信号およびTHz-TDS信号検出に成功した。近接場でのナノスケール空間分解能を評価するため、ヒ化インジウム(InAs)およヒ化ガリウム(GaAs)基板に金属ナノ周期構造をリソグラフィによりパターニングした試料を作成した。また、PCAに用いる低温成長GaAs基板のヘテロ界面を超高真空極低温環境下STM分光により行い、福井大学およびフィリピン大学ディリマン校との共同研究として行い、発光および検出に用いるPCAの高度化を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題に関して、令和元年度4月より福井大学遠赤外領域開発研究センターとテラヘルツ顕微分光開発に関する共同研究計画を締結し、センター長・谷正彦教授の研究室との共同研究を推進する体制が整った。これに基づき、先方へ訪問し技術指導を仰ぐこと、及びこちらに滞在頂き、実験指導を仰ぐことができ、効率的にテラヘルツ分光技術開発が進められた。 本課題で用いるTHzエミッターとしてこれまで福井大学・谷教授と共同開発した光伝導アンテナ(PCA)にDCバイアス10Vを印加し発生させていた。この際、検出用PCA感度向上のため、光チョッパー(2kHz)を用いたロックイン検出を行っていた。本年度は谷教授の指導に基づきACバイアス(例えば10V, 20kHz)を印加することで、信号感度向上が認められ、DCでは15nA程度だったTHz強度が50nAまで改善された。ACでは更に高い電圧の印加も可能となる利点もあり、今後検討を行う。 一方、SPM特に非接触型AFMで用いる金探針を、100um径金ワイヤの電解研磨エッチングにより行った。通常STM探針で用いる250um径のワイヤでは、探針重量が大きくなりAFMにおける探針励振共鳴が得られず、100um径としたところ、250umと同等の条件でのエッチングによる先鋭化に成功した。今後、25um径についても検討する。 作製した金探針をマニピュレータによりqPlusセンサー基板にマウントし、共振周波数~20kHz、Q値~700を確認した。ここで金探針無しのqPlusセンサーは~32kHzの共振周波数を有し、金探針重量により大きく共振周波数シフトしていることがわかった。また、今後の空間分解能評価のため、ヒ化インジウム(InAs)およヒ化ガリウム(GaAs)基板に金属ナノ周期構造をリソグラフィによりパターニングした試料を作成した。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度では、SPM-LTEMおよびSPM-THz-TDSの信号検出に成功したものの、信号強度を稼ぐため、金探針は先鋭化していないものを用いていた。今後は、先鋭化した金探針をqPlusセンサーに接着して用いる。金探針は非常にソフトであるため、非接触型AFMのフィードバックパラメータなどを最適化し、金探針にダメージを与えることなく、AFM走査が行えるようにする。その後、先鋭化した金探針により微弱となる近接場THz信号の検出効率最適化を行う。具体的には、PCAにおけるACバイアス印加の周波数依存は、1/fノイズや個々のアンテナの静電容量により最適値があるとされ、その周波数依存性を実験的に決定する。一方、SPMを用いたTHz検出では、光チョッパーやACバイアス変調周波数ではなく、qPlusセンサーの共振周波数でロックインを行うことが可能となる。即ち、金探針を含む負荷重量の調整を行い、上述の周波数依存性での最適値に一致させることを目指し、本手法の成果を論文化する予定である。光学系調整を最適化し、励振振幅の最適化および高次高調波による復調を用いたロックイン検出の最適化、これらを総合的に行い、高効率での近接場THz検出を確立する。その後、金ナノパターンを施した半導体試料を用い、そのエッジレスポンスにて空間分解能評価を行う。また、年に2度ほど、共同研究契約を締結している福井大学遠赤外領域開発研究センターを訪問し、実験および技術指導をして頂き、高効率に研究開発を進める。
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