2021 Fiscal Year Annual Research Report
擬立方晶フラクチャード強誘電体の巨大圧電応答機構解明のための構造計測手法の構築
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20H02641
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
黒岩 芳弘 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (40225280)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大沢 仁志 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 分光推進室, 研究員 (00443549)
藤井 一郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (20597645)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 誘電体物性 / 物性実験 / X線 / 超精密計測 / 構造・機能材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
フラクチャード強誘電体と呼称することにした,BaTiO3- BiFeO3をベースとする環境に配慮した鉛を含まない圧電材料が,一見して立方晶に見えるにもかかわらず,今日最もよく使用されている鉛を含む圧電材料Pb(Zr, Ti)O3 (PZT)に匹敵する圧電特性をもつ仕組みを,放射光X線回折実験によるDC電場印加下での結晶構造解析と,AC電場印加下での時分割結晶構造解析により解明することが本研究の目的である. 本研究では,研究代表者の黒岩(広島大学)と研究分担者の大沢(JASRI/SPring-8)および藤井(山梨大学)が,互いの得意分野で協力し,研究を推進した. 令和3年度では,約100 Hzから70k Hzまでの幅広いAC周波数帯で,放射光X線回折実験による電場印加下時分割構造解析を行うための計測システムを構築した.主として,大沢がデザインを担当し,SPring-8のBL02B1単結晶構造解析ビームラインに計測システムを導入した.この計測システムを用いて令和4年度に時分割実験を行う予定である.一方,時分割実験に先立ち,藤井が育成した0.2 mm程度の小さな単結晶試料0.3BaTiO3-0.1Bi(Mg1/2Ti1/2)O3-0.6BiFeO3(BT-BMT-BF)の任意の結晶方位に電極を取り付ける手法を確立し,黒岩が中心となりDC電場下で単結晶構造解析を行った.原子位置レベルでの構造解析に成功し,Biイオンが電場印加方向にオフセンターすることで分極に大きな寄与をすること,また,PZTとは異なりBiイオンの変位による単位格子の格子ひずみが主たる起源となり本質的な圧電効果が生じることを明らかにした.これらの成果と関連する成果をまとめて国際誌に投稿し,また,学会誌に解説記事を発表した.また,国際会議および国内学会で招待講演を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度である令和4年度にAC電場印加下で時分割X線構造解析実験を行うための計測システムを令和3年度中に構築し,ビームラインに導入することができた.主要パーツであるX線チョッパーについては自作し,従来のX線チョッパーとタンデムに配置することで,約100 Hzから70k HzまでのAC周波数帯で,電場印加下時分割構造解析を行うことができるようになった.DC電場印加下での構造解析を原子位置レベルで行えるようになったことから,格子ひずみレベルではなく原子位置レベルでの時分割実験の可能性が高くなった. BT-BMT-BFセラミックスに対するDC電場印加下での結晶構造解析の結果から,電場下での結晶構造を推測し,その推測に基づきBT-BMT-BFがすぐれた強誘電性・圧電性を示す仕組みをBiイオンがオフセンター配置することに関連付けて議論してきた.今回のDC電場印加下単結晶構造解析の結果から,この推測が正しかったことを証明することができた.立方晶系に帰属する物質は結晶学的に強誘電性を示すことはないが,BT-BMT-BFが一見して立方晶に見えるにもかかわらず電場印加下で極めて大きな格子ひずみをもつ起源を明らかにすることができた. 令和3年度は未だコロナ禍ではあったが,いくつかの国際会議や国内学会がオンラインで開催された.主要な会議に招待され,BT-BF系および同様な孤立電子対をもつBi系やPb系の強誘電体材料について強誘電性と結晶構造との関連について報告できた.
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度では,AC電場下時分割Ⅹ線構造解析を行う.孤立電子対をもつBi系やPb系の強誘電体によくみられる誘電緩和の本質を明らかにする.X線回折実験については,黒岩と大沢が中心となって行うが,藤井はさらなる大きな単結晶試料育成に努力する.レーザー変位計による結晶外形の変形とX線回折による単位格子の変形を比較することで,この種の圧電材料は本質的な格子ひずみによりマクロに結晶が歪むことを示す. 電場印加下での構造計測に関する最新の情報を国際会議や国内学会などで収集しながら,可能な限り早期の成果の公表を目指す.一方,BT-BF系のみならず,類似の機構で大きな圧電性を示す非鉛系圧電材料の探索も行う.
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Research Products
(18 results)