2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H02658
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬越 貴之 大阪大学, 工学研究科, 講師 (00793192)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 近接場光学顕微鏡 / 高速原子間力顕微鏡 / プラズモニクス / 近接場光学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、高速原子間力顕微鏡(高速AFM)を新たに自作することに成功した。AFMヘッド部分から、その内部のミラースキャナーシステム、ステッピングモーター、さらに試料ステージまで、従来の高速近接場光学顕微鏡で用いられていたものより、大幅に改良することができた。構築した高速AFMヘッドは、カンチレバー設置部分の左右に空間があり、追加工すれば横照射系を導入できるようになっている。高速AFMカンチレバースキャナーも新たに構築し、共振などを抑制し、問題なく動作することが確認できた。構築した新しい高速AFMで、カーボンナノチューブやグラフェンなどの材料から、脂質二重膜などの生体試料まで、10フレーム/秒で動画観察できることを確認した。 さらに、開発した高速AFMに光計測技術も組み込んだ。高速AFMの微小カンチレバー付近にレーザー光を入射し、集光スポット上をカンチレバーで高速スキャンすることによって、集光スポットを動画観察することに成功した。また、微小カンチレバー高速走査をトラッキングするためのレーザースキャナーを自作し、微小カンチレバーの二次元走査と同期して入射レーザーをスキャンできる制御プログラムも作成した。レーザースキャンのon/offを瞬時に切り替えられる制御も導入し、操作性を高めた。高速近接場光学顕微鏡では、カンチレバーの先端にレーザーを集光・照射して近接場光を生成するため、カンチレバーの動きと同期してレーザー集光スポットを走査する技術が不可欠であり、このための要素技術を開発することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、新たな高速AFMヘッドの構築を主な研究計画として挙げていた。まだまだ改良する点は多くあるが、高速AFMヘッドの基本構成を構築することができ、その他の高速AFMに関する部分も開発・調達することができた。独自構築した高速AFMが、従来の高速AFMと比較しても遜色なく動作することも確認できている。微小カンチレバーを高速トラッキングするレーザースキャナーを構築し、光計測技術を高速AFMに組み込むこともできた。レーザースキャナーのトラッキング制御プログラムも構築できており、動作確認できる段階にまで進めることができた。実際に、レーザー光の集光スポットを微小カンチレバーで二次元走査することによって、動画観察できることも確認できている。以上から、本年度に計画していた通り、概ね順調に進展させることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
高速AFMを一から開発し、基本構成を整えることができたため、今後はまず高速近接場光学イメージングの実現と、その更なる高速化に尽力する。既に、レーザースキャナーとその制御プラグラムを自作できており、高速化に重要なロックインアンプの選定も完了している。まずは、レイリー散乱光を検出光として、高速近接場イメージングを実現する。テスト試料としてポリスチレンビーズを用いる。さらに情報量の多いラマン散乱光やフォトルミネッセンスも検出光として、高速近接場イメージングを試みる。まずは、高速化の容易な透過型の系でイメージング速度を高め、十分な性能が得られれば、横照射系を利用して反射型で高速近接場イメージングを実現する。また、反射型でも十分なイメージング速度が得られるよう、高速AFMヘッド部分の改良や対物レンズの選定を行う。 反射型の高速近接場イメージング法が完成すれば、半導体材料や生体組織などへ応用し、様々な分野へ新たな知見をもたらすと同時に、当該顕微法の有効性を強く示す。
|