2020 Fiscal Year Annual Research Report
量子ビームを用いた過酷事象下の軽水炉水化学技術確立のための基盤研究
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20H02667
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
室屋 裕佐 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (40334320)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高温高圧水 / 放射線分解 / ピコ秒時間分解分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
軽水炉炉心冷却水の環境把握と制御はプラントの健全性確保に必要不可欠である。放射線照射に伴う水の改質が応力腐食割れや放射能移行に直結するが、炉心は強い放射線環境にあるため計測機器による実環境測定は困難であり、基礎科学的な知見や数値計算に基づく評価と状態予測が必要である。既往の研究から純水の放射線分解反応に関する知見は充実しつつあるが、高温高圧且つ高濃度溶質存在(海水混入)といった過酷条件下の放射線化学的知見は極めて断片的である。本研究ではそのような通常稼働時とは全く異なる冷却水環境を対象として、量子ビームを用いた反応機構解明(実験)と反応動力学計算(数値計算)を合わせて実施し、放射線分解反応を体系化することで過酷事象下の軽水炉水化学技術の学術基盤を確立する。本研究ではまず反応機構解明のための実験体系の構築と整備を行った。放射線分解反応初期生成物は反応性が高く短寿命であり、高温高圧条件では更に高い反応性を有するため、過渡的な反応を追跡するためにはピコ秒・ナノ秒といった高時間分解能を有する計測システムが必要である。そこで電子線型加速器施設において、Lバンドライナックおよびフェムト秒レーザを用いて、ポンププローブ方式に基づくピコ秒分解能の高時間分解分光測定系を構築した。予備実験として水和電子を測定対象としてピコ~ナノ秒領域の過渡吸収測定実験を行った結果、ピコ秒~10マイクロ秒の幅広い時間レンジにわたり良好なS/N比で計測を行うことに成功した。また、照射後の最終生成物を分析するため質量検出器や液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフの測定体系も整備した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放射線分解反応はピコ秒・ナノ秒といった短時間に進行するため、これを直接追跡するためのポンププローブ方式に基づく新しい高時間分解分光測定系を構築・適用することができた。従来のポンププローブ測定装置では計測可能な時間領域がナノ秒以内と狭く、測定できる現象も限られていたが、本研究において光学的ディレイによりピコ秒~10ナノ秒、さらに電気的ディレイにより10ナノ秒~10マイクロ秒まで時間スキャンが可能となった。速い反応から遅い反応まで一連の情報を同時に得ることが可能となり、次なる段階である放射線分解反応系の解明に向け足掛かりを得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
構築した高速時間分解分光装置を駆使し、高温高圧かつ高濃度溶質存在条件(塩化物イオン、臭化物イオン、炭酸等)において引き起こされる放射線分解反応解明を進める。重要な反応中間体(水和電子、OHラジカル、H原子)を対象に反応ダイナミクスを追跡し、収量(G値)やKineticsの基礎データを取得すると共に、反応動力学計算コードも構築し、放射線分解過程に関わる重要な素反応や時間的空間的発展について詳細な検討を進める。
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Research Products
(5 results)