2020 Fiscal Year Annual Research Report
Imaging of interaction frontier orbitals by electron momentum spectroscopy of atomic and molecular clusters
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20H02688
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| Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
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Principal Investigator |
山崎 優一 東京工業大学, 理学院, 准教授 (00533465)
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| Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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| Keywords | 分子軌道 / 波動関数 / クラスター / 電子分光 / 物理化学 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、原子・分子集合体の価電子波動関数形状、ないしは価電子軌道分布を直接観測するための新しい分光法を実現することである。この目的のため、孤立分子の分子軌道形状を運動量空間で観測する電子運動量分光を、原子・分子クラスターをも対象とする「分子間相互作用系の電子運動量分光」へと質的展開し、サイズ選別したクラスターの相互作用フロンティア軌道の電子運動量密度分布を観測する手法として開発・確立する。これにより、分子間力の起源の解明に対して従来とは異なる根本的視点からの研究を可能とする「分子間相互作用軌道イメージング」の開拓を試みる。
本研究で実現を目指す原子・分子クラスターの電子運動量分光装置は、（１）真空チェンバー、（２）大型排気ポンプ、（３）超音速パルス分子線、（４）ナノ秒ポンプレーザー、（５）パルスプローブ電子銃、（６）全方位角型電子エネルギー分析器、（７）全立体角型イオン画像分光器、（８）信号処理回路の８つの設備からなる。これらのうち、（２）と（４）は既存のものを利用し、（１）、（３）、（５）～（８）は自作する。
令和2年度は（８）に関連して、高速電子衝撃イオン化で生成する散乱二電子とクラスターイオンとの三重同時計測事象を判定する回路の開発を進めた。分子科学研究所・装置開発室の技術支援を得て、既存の回路よりも二電子選別効率をさらに高め、かつ、CPLD（Complex Programmable Logic Device）を用いることにより省スペース・省電力化を図った。一方、原子・分子クラスターの電子構造を光電子角度分布からも明らかにするために、光電子・光イオン同時計測画像観測装置に既存のフェムト秒レーザーシステムを組み合わせた形の計測システムを立ち上げ、クラスターの分子間結合軸を規定した光電子角度分布測定の準備を進めた。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度の当初計画では、試作を要する設備を整備する予定であった。具体的には、研究代表者の前任地である東北大学多元物質科学研究所・機械工場の技術支援を得て、電子銃、電子エネルギー分析器等の設計を開始し、それに合わせた真空チェンバーの仕様を決定する予定であった。しかしながら、新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、研究時間や環境が大幅に制限されることとなり、さらには出張を繰り返すことで綿密な研究打ち合わせを実施する機会を確保することが困難であった。そこで令和2年度はまず、比較的試作をしやすい同時計測回路の開発を分子科学研究所・装置開発室との共同研究の形で開始した。これは、本回路が装置開発室と研究代表者らがこれまで実施してきた共同研究をベースにしており、またオンラインでの数回の打ち合わせで比較的容易に回路の仕様を決定できたためである。現在までに、CPLD部の実装・評価実験、信号のレベル変換回路の開発をほぼ終了している。
実験設備の設計・試作の代わりに令和2年度はまた、光電子・光イオン同時計測画像分光器と既存のフェムト秒レーザーを組み合わせた形の計測システムの立ち上げを行った。その結果、フェムト秒レーザーによる多光子イオン化で生成した光電子や原子クラスターイオン、および解離イオンの信号を画像観測する装置を立ち上げた。これは、分子間相互作用系の電子運動量分光と相補的な情報を与えうる計測法の実現を強く示唆するものであり、本研究課題の意義をさらに深化させる成果である。
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| Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は令和2年度に整備できなかった試作を要する設備の開発を進める。山崎（研究代表者）と大島（東工大教授）、および東工大生２名は分子線源、電子銃、電子エネルギー分析器、およびイオン分析器の設計を開始し、それに合わせた真空チェンバーの仕様を決定する。これらは、新型コロナ感染症拡大の影響から令和2年度に実施することが困難であったが、令和3年度は東北大学多元物質科学研究所・機械工場の技術支援を仰ぎ、同研究所・高橋正彦教授研究室との共同研究の形で実施する計画である。なお、クラスターの電子エネルギー準位を分離して観測するため、電子エネルギー分析器のエネルギー分解能は2 keVの入射エネルギーに対して0.5 eVを当面の目標とする。
上記と並行して、昨年度から分子科学研究所・装置開発室と開始した三重同時計測回路の開発を、山崎と東工大生１名とで引き続き行う。三重同時計測回路の各構成要素の作成および評価実験は概ね順調に進んでおり、今年度はそれらを一つにまとめて所期の性能を確認することが第一の目標となる。またさらに、原子・分子クラスターの光電子・光イオン同時計測画像観測分光法の開発も引き続き推進する。第一の標的としてまずXe二量体を対象とし、極短パルスレーザーによる原子間軸の非断熱配向と、それに引き続く多光子イオン化を利用して、クラスターの原子間結合軸を規定した光電子角度分布の観測を試みる。
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Research Products
(4 results)
