2021 Fiscal Year Annual Research Report
固液界面機能と脂質二重膜を用いた人工生体膜反応場の構築
Project/Area Number |
20H02690
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
手老 龍吾 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40390679)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
戸澤 譲 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90363267)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脂質二重膜 / イオンチャネル / 原子間力顕微鏡 / 無細胞合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂質二重膜と膜タンパク質が構成する分子集合体は、細胞膜を通しての細胞内外の情報伝達・物資輸送を担っている。本研究では、膜内分子集合体を人工脂質二重膜系と無細胞タンパク質合成系を用いて組み立て、その働く機構を明らかにすることを目的とする。hERGチャネルを対象として、支持脂質二重膜(SLB)への再構成と分子像観察、無細胞合成系での4量体形成、活性構造と薬剤応答の観察の3つの課題に取り組む。2021年度は前年度に見出した新規脂質膜内ドメインの形成機構解明、天然物由来の脂質によるSLB形成および無細胞合成の条件検討に取り組んだ。 これまでにチャネル電流計測やプロテオリポソーム(PL)融合に実績のあるフォスファチジルコリン(PC)、フォスファチジルエタノールアミン(PE)およびコレステロール(Chol)からなるSLB内に形成される微小脂質ドメインについて、多価不飽和PEがドメイン形成の主要因であることを前年度に見出した。PEによるドメイン形成能について、PEアシル鎖の不飽和度とsn位置への依存性を網羅的に調べ、不飽和度が高いほど、不飽和度が同じであればsn-1, -2位に二重結合が分布する方が、ドメインが形成されやすいことを見出した。また、多価不飽和PCでもドメインは形成されるが、PEと比べて形成能は低かった。これらの結果に基づき、多価不飽和脂質とCholの親和性からドメイン形成機構を説明した。このドメインは脂質ベシクルの融合サイトとして働くことから、人工脂質二重膜系への膜タンパク質再構成におけるボトルネックを解消するための知見としても有用である。 hERGチャネルの発現は従来通りコムギ胚芽抽出物を用いた無細胞合成で行うが、4量体形成の効率を向上するために用いる脂質の種類も含めて発現と精製の条件を再度検討し直した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実施計画に記述した2つの実験課題について、上述の通り順調に研究成果を挙げることができている。学会等における成果発表および論文発表も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度以降は引き続き、SLB内に再構成したhERGチャネルの分子像とその会合状態について原子間力顕微鏡観察を行う。PC+PE+Chol-SLB系についてはSLB形成の脂質組成依存性やPL融合の条件が確立されつつある。一方、無細胞合成では良好な結果が得られた大豆由来の粗精製脂質については、SLB作製の再現性や作製後のSLB上に残る夾雑物の除去など解決すべき点が残されており、引き続き条件検討を進める。無細胞合成時にコシャペロンの共合成を行い、AFMによる分子像観察の結果から得られる会合体の存在比を明らかにする。得られた結果をフィードバックして、hERGチャネルの発現量やコシャペロン存在比などPL合成の反応条件を最適化する。膜タンパク質を含むSLBの作製においては、PLからSLBへの再構成過程に依存して膜タンパク質の配向が変化すると考えられる。無細胞合成hERGチャネルの単量体および4量体について、細胞外側・内側の膜外領域の大きさから分子配向を評価し、その制御が可能かを検討する。
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Research Products
(16 results)