2020 Fiscal Year Annual Research Report
新規な励起三重項生成法に基づく究極的なフォトン・アップコンバージョン材料の創出
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20H02713
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
楊井 伸浩 九州大学, 工学研究院, 准教授 (90649740)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | フォトン・アップコンバージョン / 光物性 / 励起三重項 |
Outline of Annual Research Achievements |
長波長光を短波長光へと変換するフォトン・アップコンバージョンはエネルギーからバイオロジーまで幅広い分野に貢献しうる現象である。しかしながら、太陽光程度の弱い励起光を用いて高効率なフォトン・アップコンバージョンを発現することは未だに困難である。本研究ではフォトン・アップコンバージョンに関わる複数の過程の中でも励起三重項を発生する過程に着目し、新たな励起三重項の発生によりこの問題の克服を目指している。 固体中においてフォトン・アップコンバージョンを発現することは太陽電池や光触媒といった太陽光利用デバイスへの応用において特に重要である。低い励起光強度で高効率なフォトン・アップコンバージョンを示す固体システムの実現には、結晶性の発光体を用い、その結晶性を損なうことなく増感剤をドープする必要がある。しかしながら、増感剤と発光体の分子サイズや形状が大きく異なるため、その両立はこれまで困難であった。 本研究ではこの問題を解決するための戦略として、発光体の結晶中に電荷移動錯体を生成させることを提案する。発光体と電荷移動錯体を形成しうる電子アクセプターを用い、電荷移動相互作用を駆動力として発光体結晶中へとドープする。光励起された電荷移動錯体が系間交差して励起三重項となり、発光体へと三重項エネルギーが移動し、増感された三重項エネルギーが発光体結晶内で拡散して三重項-三重項消滅(triplet-triplet annihilation, TTA)を起こすことで、フォトン・アップコンバージョンを発現すると期待される。実際に電荷移動錯体に基づく吸収を示す結晶材料を得ることに成功し、得られた結晶にレーザー光を照射したところアップコンバージョン発光を観測することが出来、本研究のコンセプトを実証することが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究のコンセプトである、電荷移動錯体の形成による結晶中における励起三重項発生に基づくフォトン・アップコンバージョンの発現を実証した。これは低励起光強度で高効率なフォトンアップコンバージョンを実現するために必要となる新しい励起三重項の発生法の開発に成功したものであり、当初の計画を上回るスピードで研究が進捗していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において見出した新たな励起三重項発生法に基づくフォトン・アップコンバージョンの性能を更に高めるため、様々な発光体と電子アクセプターの組み合わせを系統的に探索し、また結晶材料の調整方法についても種々検討を行っていく。発光体と電子アクセプターのエネルギー準位を制御することで、異なる波長域を対象にしたフォトン・アップコンバージョンの発現、即ち本研究のコンセプトの一般化についても併せて進めて行く予定である。
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Research Products
(21 results)