2020 Fiscal Year Annual Research Report
Thermo-responsive molecular electrochemistry
Project/Area Number |
20H02714
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 鉄兵 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10404071)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 熱化学電池 / プロトン共役電子移動 / LCST / ミセル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は様々な相転移現象を熱化学電池に導入し、小さな温度差で電圧を形成することで高いゼーベック係数の実現を目指した。第一に、PNIPAMのLCST相転移を用いた熱化学電池の構築を行った。ポリN-イソプロピルアクリルアミド(PNIPAMは)は、温度上昇に伴って親水性から疎水性への相転移を示すことが広く知られている。このPNIPAMにアクリル酸を共重合することで、低温で酸性、温度上昇に伴って中性へと溶液のpHを変化させられることが報告されていた。この共重合体の溶液にキンヒドロン(p-ヒドロキノンとパラキノンの1:1混合体)を酸化還元種として加えることで、-6 mV/Kを超える非常に大きなゼーベック係数が得られることを実証した。さらにアクリル酸の代わりにアミンを共重合させることで、アルカリ性-中性の相転移を実現し、それにより+6mV/Kを超えるn型の熱化学電池の構築にも成功した(J. Am. Chem. Soc. 2020、17318)。 第二に、1電子多プロトン型のプロトン共役電子移動反応を用いた熱化学電池の構築を行った。ルテニウムトリスビイミダゾール錯体は弱アルカリ性条件下で1電子多プロトン反応を起こすことが知られていた。これを熱化学電池に利用することで、-3.7 mV/Kにおよぶ高いゼーベック係数が得られた。本成果はChem. Eur. J. 2020, 4287に報告され、HOT Paperに採択された。 他にもフェロシアン化物イオンとフェリシアン化物イオンとのミセルへの相互作用の違いを利用したもの(Chem. Lett. 2020, 1197)や、シクロデキストリン誘導体の凝集を利用したもの(Chem. Commun. 2020, 7013)などの多様な熱化学電池を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多様な温度応答性の物理化学現象を熱化学電池を実証し、熱起電力を得ることに成功した。またそのメカニズムについて研究を行うことで、プロトン共役電子移動反応のエントロピー効果やミセルのイオン吸着選択性の温度依存性など、熱応答性の科学現象を見出すことにつながった。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は、様々な熱応答性の物理化学現象を熱化学電池に導入することで、高いゼーベック係数を得ることに成功してきた。一方、熱化学電池を実用化する上では多数の課題が残っている。第一に熱化学電池のキャリア伝導度は低く、大きな内部抵抗を生じるという問題がある。そこで、今後は溶解度の高いプロトン共役電子移動型酸化還元種について検討を行う。 また廃熱としては200 ℃程度(中温域)のものの割合が多い。そこで中温域で作動する熱化学電池についても研究を行う。これらは熱化学電池の実用化に向けて重要な課題へのチャレンジとなる。 他にも申請書に記載した多様な熱応答性の現象の導入を試みる。
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