2021 Fiscal Year Annual Research Report
Thermo-responsive molecular electrochemistry
Project/Area Number |
20H02714
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山田 鉄兵 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 教授 (10404071)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
周 泓遥 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (20902092)
岡 弘樹 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員 (50907376)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 熱化学電池 / プロトン共役電子移動 / LCST / 電気化学ペルチェ効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は次の4つの研究について進展があった。 第一にプロトン共役電子移動反応の温度依存性について、大きな進展があった。ルテニウムトリスビイミダゾール錯体のPCET反応を利用した熱化学電池は、酸化還元活物質の溶解度に課題があった。そこで、レドックスフロー電池に用いられるバナジウムアクア錯体を用いた熱化学電池を作成したところ、高い溶解度と高いゼーベック係数を両立し、ベンチマークとして広く用いられているフェロシアン・フェリシアンの系を凌駕する性能指数を示した。バナジウムアクア錯体については特許出願に至っている。またLCST転移によってpHを調整することの出来るpNIPAMナノゲルを用いた熱化学電池は、高いゼーベック係数を示すことを実証し、論文投稿に至った。 第二に中温域と呼ばれる100~200℃程度の領域における熱化学電池の研究に進展があった。エチレングリコールと塩化コリンからなる深共晶液体(DES)が、中温域にて安定で、フェロシアン・フェリシアンの溶液が比較的高いゼーベック係数を示すことが明らかになった。この系は、イオン液体と比較して、活物質の濃度が低い領域で良好な結果となった。本課題は2022年度の実施予定であったが、既に論文投稿に至っている。 第三に、熱化学電池の逆反応である電気化学ペルチェ素子の実証に成功した。 第四に、TRECシステムに取り組んだ。二次電池の充放電電圧の温度依存性を利用して熱電変換を行うTRECシステムは高い熱電変換効率を示すことが知られている一方、その熱起電力の起源については不明な点が多い。2021年度はリチウムイオン電池型のTRECシステムを作成し、正極の電位の温度依存性の研究の評価系を立ち上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異動やコロナ禍等の課題がある中で、上記に示すとおり多様な系について当初計画に則って研究が進捗している。 また一連の研究がまとまりつつあり、BCSJ誌に総説を投稿した。またこれらの成果を元に、学術振興会賞の受賞に至った。 得られた成果については2022年度に原著論文として出版することが求められる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、第一に、おおよそ実証に成功した電気化学ペルチェ素子について、論文化を目指す。論文化においては、ホスト-ゲスト化学による電気化学ペルチェ効果の増強について定量的な議論を行い、電気的な包接・脱包接による熱輸送という新たな現象を実証する。 またバナジウムアクア錯体についても予備的に電気化学ペルチェ効果が見られており、こちらも論文化する。さらに、レドックスにより相転移する化合物を種々検討し、これらが電気化学ペルチェ素子として利用可能かを明らかにする。 第二に、輸送速度についての研究を展開する。熱化学電池の電解液を固体化した際には、キャリアの拡散速度が遅くなるという課題がある。そこで、固体素子を電極として用いたTRECシステムを展開する。 第三に、逆に液体素子である点を活かした効率的な熱輸送システムの構築を目指す。 これらにより温度応答性電気化学という学術分野の展開を試みる。
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Research Products
(12 results)