2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of Electronic Structures and Physical Properties of m-Quinodimethane-Based Open-Shell Molecules
Project/Area Number |
20H02723
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清水 章弘 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (30584263)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ジラジカル / 双性イオン / 基底三重項 / 炭化水素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では m-キノジメタン構造を基盤とする開殻性π共役分子の研究として、1) 不対電子を相互作用させるヘテロ原子により、π共役双性イオンの基底スピン多重度を制御し、電子構造と物性を解明すること、2) 含ヘテロ原子π共役双性イオンの高い反応性を利用して、新規π共役分子の合成法を開発すること、3) 基底三重項の縮合多環炭化水素を単離し、電子構造と物性を解明すること、を研究目標としている。 1) に関しては、カルバゾール骨格を有する含窒素π共役双性イオンを設計し、合成・単離に成功した。また、両性の酸化還元特性を示すことと、近赤外領域に吸収を有することを明らかにした。以前に研究した開殻性π共役双性イオンと比較して開殻性が大きく、HOMO と LUMO のエネルギー差、および、基底一重項状態と熱励起三重項状態のエネルギー差が小さいことを明らかにした。 2) に関しては、含硫黄開殻性分子の前駆体を合成し、目的化合物の発生を検討したところ、特異な反応が進行することを見出した。 3) に関しては、基底三重項非ケクレ炭化水素分子であるトリアンギュレンにかさ高い置換基を導入して速度論的に安定化した誘導体の合成・単離に成功した。吸収スペクトル、酸化還元特性、ESR スペクトル、磁気特性、熱容量などの測定により、各種基礎物性や電子状態の解明に成功した。また、基底三重項ケクレ炭化水素分子を設計し、脱気封管中での発生と検出に成功した。ジカチオンおよびラジカルカチオンの結晶化に成功しており、現在、ジラジカルの結晶化を検討している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
含窒素π共役双性イオンと基底三重項非ケクレ炭化水素分子の合成・単離に成功した。また、含ヘテロ原子π共役双性イオンの特異な反応も見出しており、基底三重項ケクレ炭化水素分子の脱気封管中での発生と検出にも成功している。
|
Strategy for Future Research Activity |
1) については、含窒素π共役双性イオンの ESR 測定による熱励起三重項種の検出および、ラジカルカチオンとラジカルアニオンの合成・単離を検討する。2) については、かさ高い置換基を導入することにより、含硫黄開殻性分子の発生とその検出を検討する。3) については、ケクレ炭化水素ジラジカルの単離とヘテロ原子の導入による新規基底三重項ジラジカルの合成を検討する。
|