2022 Fiscal Year Annual Research Report
スピロビフルオレンの連結に基づく新奇3次元π共役系分子の創成
Project/Area Number |
20H02724
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
雨夜 徹 名古屋市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (20397615)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | スピロビフルオレン / キラル / ホストゲスト化学 / 不斉認識 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ユニーク且つ未踏のジオメトリーを有するπ共役系化合物群をスピロビフルオレンの連結を基軸とし創成するとともに、得られた3次元構造体のキラル空孔における分子認識、キロプティカル特性、空間的な軌道相互作用に基づく3次元的な共役、を明らかにすることを目指し検討を重ねている。今年度は、キラルなスピロビフルオレン環状オリゴマーにおける内部のキラル空孔におけるゲスト認識能について、検討を行った。具体的には、キラルなスピロビフルオレン環状3量体あるいは環状4量体の末端に水酸基をそれぞれ6つおよび8つ導入したマクロサイクルを合成し、塩基性水溶液中において、種々のゲスト分子の包接能を1HーNMRおよび等温滴定型カロリメトリー(ITC)を用いて解析した。その結果、4級アンモニウム塩をはじめとするカチオン性ゲストを包接できることを明らかにした。特に、スピロビフルオレン環状4量体は、コバルトセニウムカチオンを強く包接することを明らかした(結合定数:3.0 × 105 M-1)。生理活性物質として、N-メチルニコチン酸(トリゴネリン)の包接も可能であった。また、キラルなゲストとして(L)-カルニチンを用い、P体とM体のスピロビフルオレン環状4量体の包接能の違いを調べた。その結果、M体の方がP体よりも2.7倍も結合能が強いことが明らかになった。すなわち、本ホスト分子を用いて、水溶液中において不斉ゲスト認識を達成できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、水溶性のキラルスピロビフルオレン環状オリゴマーを合成し、それをホスト分子として不斉ゲスト認識を行うことを目指し、研究を展開した。実際、目的分子の合成を達成するとともに、不斉ゲスト認識もデモンストレーションできたため、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、キラルスピロビフルオレン環状オリゴマーの機能を開拓すべく、ラジカルカチオン状態としたときの電子移動特性などを調べる。さらに、スピロ炭素のかわりに、結合切断が可能なスピロケイ素分子を合成する。末端を適切な官能基に変更したのちに、分子内で制御してつなぐことができれば、脱ケイ素後、結び目構造や織り構造が構築できる。このように、合成化学を基軸とする新規化合物創成とその構造特性を明らかにする研究を展開する。
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