2021 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H02726
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
酒巻 大輔 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (60722741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤原 秀紀 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70290898)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 動的共有結合 / 有機ラジカル / 二量化 / 芳香族アミン / ジシアノメチルラジカル |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に引き続き,電子ドナー基であるフェロセンにジシアノメチルラジカルを導入したラジカルの動的共有結合特性について検討を行った。フェロセンは安定な酸化還元挙動を示すため、これらのラジカルについてもその酸化還元特性が注目される。そこで、フェロセンに1つのジシアノメチルラジカルを導入したモノラジカルについて詳細な電気化学測定を行った。モノラジカルのσ二量体のジクロロメタン中におけるサイクリックボルタモグラムを測定すると、最初の正電位方向へのスキャンで0.13 V(フェロセン基準)に可逆な酸化還元波対(A, B)が観察された。電位を負側に掃引すると、-0.4 V以下で還元電位の緩やかな上昇が観察された(C)。Cのプロセスでは明確な還元ピークが見られないのに対し、-0.36 Vに対応する再酸化ピークが明確に観察された(D)。可逆的な酸化還元波ピークAおよびBは、それぞれ二量体の2つのフェロセン部位の同時2電子酸化および再還元によるものだと考えられる。CおよびDの過程は、それぞれ解離したラジカルが閉殻アニオンに1電子還元される過程とアニオンが中性ラジカルに再酸化される過程であると考えられる。以上より、このラジカルが電気化学反応と連動した興味深い動的共有結合特性を示すことを明らかにした。上記の成果はChemical Communications誌に報告した(DOI: 10.1039/D1CC07253F)。 また、フェロセンに2つのジシアノメチルラジカルを導入したジラジカルの合成も行った。フェロセンに2つの4-ジシアノメチルフェニル基を導入した前駆体の合成に成功し、その酸化によってラジカルの発生を試みたが、極めて難溶性の物質が生成した。そのため、ジラジカルの場合は可溶性置換基の導入が必要であることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フェロセンと共役したジシアノメチルラジカルの動的共有結合特性が電気化学反応によって変調されるかの機構を解明することに成功した。また、フェロセンに2つのジシアノメチルラジカルを導入したジラジカルの合成に関しても進展があった。ジラジカルの合成検討から、ジラジカルの会合体は溶解性が極めて低く、可溶性置換基の導入が不可欠であるという知見が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究から、フェロセンに2つのジシアノメチルラジカルを導入したジラジカルには可溶性置換基の導入が不可欠であるという知見が得られたため、適切な置換基を導入したラジカルの合成を行う。また、金属イオンへの配位能を有した動的共有結合性ラジカルについても引き続き合成および錯形成実験を推進する。
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