2022 Fiscal Year Annual Research Report
Development of helical phthalocyanine analogues
Project/Area Number |
20H02728
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
村中 厚哉 国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (20374902)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フタロシアニン / らせん / 円偏光発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
3次元らせん構造をもつフタロシアニン系化合物および関連するπ電子系化合物に関して種々研究をおこなった。
1)軸性キラリティーをもつビナフチルユニットによってらせん構造を固定したフタロシアニン系化合物の銅錯体が無金属体と酢酸銅を用いて室温で容易に合成されることを明らかにした。得られた銅錯体は無金属体に比べて長波長領域に吸収帯をもち、350-600 nm の領域に強い円二色性(CD)シグナルを示した。この銅錯体は 650-900 nm の赤-近赤外領域において弱い吸収を示し、左巻きらせん構造をもつ銅錯体ではこの領域に正の大きな異方性因子をもつ CD シグナルを示すことが確認された。密度汎関数理論(DFT)計算を用いて銅錯体の光学特性を計算したところ、長波長側の吸収帯は配位子から金属への電荷移動吸収に起因することが考察された。
2)イソインドリンユニットが3つとピリジン環ユニットが4つから構成される長いらせん構造をもつ化合物と酢酸亜鉛または酢酸銅を反応させると亜鉛二核錯体または銅二核錯体が形成されることが質量分析から確認された。亜鉛二核錯体は精製の途中に金属イオンが外れ無金属体が生成されたのに対して、銅二核錯体は溶液中安定であった。長いらせん構造をもつ無金属体が 540 nm に蛍光を示すのに対して亜鉛二核錯体は 570 nm をピークにもつ蛍光を示した。銅二核錯体は無金属体に比べて吸収スペクトルが長波長シフトした。金属の配位によるらせん化合物の光学特性の変化は DFT 計算によって再現された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに開発した種々のらせん構造をもつフタロシアニン系化合物において新規金属錯体を合成しその性質を明らかにすることができた。各らせん化合物において、安定な錯体を形成する金属イオン、錯体を形成するが安定性に乏しい金属イオン、錯体を形成しない金属イオン、が明らかとなり、おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に引き続きこれまでに合成することができたらせん構造をもつフタロシアニン系化合物無金属体及びそれらの金属錯体に対してキロプティカル特性を精査する。新しいらせん構造をもつフタロシアニン系化合物を合成しその物性を評価する。
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