2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of new synthetic methods based on catalytic skeletal rearrangement reactions
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20H02731
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
中村 達 東北大学, 理学研究科, 准教授 (00333899)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 転位反応 / アニリン / 銅触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
アニリン化合物は医薬品や有機材料などに幅広く利用されており、機能をコントロールする原子団(置換基)が適切な位置に修飾されたアニリン誘導体の効率的合成法の開発は重要である。特にアニリンへの置換基の導入法として最も利用されている反応(求電子置換反応)ではアニリンのオルト位またはパラ位に選択的に修飾されることから、メタ位への選択的導入手法の開発は未だに挑戦的課題である。近年遷移金属錯体を触媒として用いることによりメタ位の炭素-水素結合を直接的に修飾するC-H活性化法が注目を集めるが、この最新の手法をもってしても2つのメタ位が同時に修飾されたり、パラ位に置換基がある場合に効率性が低下するといった問題点があり、新たな方法論の開発が求められている。この問題点に対し、我々は転位反応を用いた新たなメタ位置換型アニリンの効率的合成法を開発した。すなわち、我々は窒素上にメトキシ基(OCH3)とオルト位に電子供与基 (EDG) をもつアニリンを設計し、炭素求核剤 (R-H) の存在下でカチオン性銅触媒を作用させたところ、メタ置換アニリンが効率的に得られることを見出した。鍵となる転位反応により求核剤の付加を受ける反応性中間体(オルトキノールイミン)が一度だけ生じることから、メタ位が2つとも修飾されてしまうことがない。またパラ位には幅広い置換基が適応可能であり、アニリンのベンゼン環上に複数の置換基を選択的に配置することができることが特徴的である。出発物質も容易に調製できることから、多置換アニリンの効率的かつユニークな合成法といえる。本反応を用いて合成された生成物が医薬品や有機材料などの開発研究に将来応用されることを期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
[1,3]-酸素転位反応の利用性の拡大に関しておおむね順調に進展している。ナフタレン環のみならずインドール環上でも[1,3]-転位が効率的かつオルト選択的に進行することを明らかにした。従来法とは異なる位置選択性を示すことから合成手法として有用である。また、オルトキノールイミンがジエンとしての反応性を示し、脱芳香族化を伴って三次元化合物が高立体選択的に合成できることを明らかにした。さらにアルコールを求核剤とする[1,3]-酸素転位ーオキシマイケル付加反応とのカスケード反応によるメタアミノフェノール誘導体の選択的合成法の反応条件を確立した。 一方πルイス酸金属触媒による骨格転位反応の開発において、これまで酸素上にプロパルギル基を有するオキシム(O-プロパルギルオキシム)を中心に研究を展開してきたが、これより一炭素長いO-ホモプロパルギルオキシムの反応性を明らかにした。金触媒を作用させることによりエキソ環化ー分子間メチレン移動が進行し、3位にアルケニル基が置換したイソキサゾリンが効率的に合成できる。反応混合物を精査した結果、基質の3量化に対応する分子イオンピークを検出した。この結果は分子間メチレン移動を支持する結果である。 さらにスルフィニルイミンが興味深い反応性を示し、含窒素3員環ヘテロ環であるアジリン化合物が効率的に合成できることを見出した。これまでオキシムがπルイス酸触媒による骨格転位反応における有用な官能基として汎用されていたが、その硫黄類縁体であるチオオキシムは利用された例はなく、我々はスルフィニルイミンより効率的にチオオキシムを発生できることを見出した。この成果は当初予想していなかった結果であり、計画以上の進展といえる。この基質の詳細な反応性の検討を今後行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はエナンチオ選択的[1,3]-酸素転位反応の開発を目指す。光学活性キノールイミンの合成法は無いため、新たなキラルビルディングブロックとして期待できる。多様なキラルNHC配位子を検討する。更に発生した光学活性キノールイミンを利用し、求核剤へ不斉転写し、メタ位に不斉中心を有するアニリンの合成法を開発する。さらに、ドミノ[1,3]/[1,2]転位への展開により、軸不斉ビアリール化合物の合成法を確立する。また、ヘテロ環上での[1,3]-酸素転位反応において既存のカチオン性銅触媒は低活性であることから、新たな触媒系の探索を行う。さらにアルコールを求核剤とする[1,3]-酸素転位ーオキシマイケル付加反応とのカスケード反応によるメタアミノフェノール誘導体の選択的合成法の基質適応範囲の拡充を目指す。さらに(1)[1,3]-酸素転位ーオキシマイケル付加(2)置換基への持たないオルト位への[1,3]ー酸素転位と(3)ドミノ型[1.3]/[1,2]転位を含む3種類の骨格転位反応を反応条件により自在に制御するアミノフェノール誘導体の多様合成を確立する。 一方アルキンのπ活性化を鍵とする触媒的骨格転位反応の研究においてはスルフィニルイミンを適切に配置した基質を設計し、詳細な反応性の検討を今後行う予定である。これらに置いては計算科学的手法も用いて反応機構の詳細な検討を行う。また、多置換リン化合物の合成を志向した骨格転位反応の開発に着手する。
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Research Products
(7 results)