2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20H02732
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鷹谷 絢 東京工業大学, 理学院, 准教授 (60401535)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 有機合成化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「金属間協働作用の戦略的利用を可能にする多核遷移金属錯体触媒の精密設計と機能開拓」に取り組み,通常の単核金属では実現困難な「二酸化炭素や水などの普遍小分子を合成素子とする新しい分子変換反応」や「単純飽和炭化水素のsp3C-H結合変換反応」といった高難度分子変換反応を実現することを目指すものである。本年度は,主に様々な多核遷移金属錯体の合成と構造解析,ならびにその基本的反応性の解明に取り組んだ。 N,P-多座配位子を分子鋳型として用いる系については,ルテニウム,ならびに鉄を始めとする第4周期遷移金属を配位子として導入した様々な後周期遷移金属二核錯体の合成に成功した。また金属上の配位子置換反応により,様々な誘導体を合成することにも成功し,それらの錯体の構造をX線構造解析により明らかにした。また,これらの錯体の紫外可視吸収スペクトルと理論計算から,金属と配位子間のMLCTに由来する吸収を確認し,これらの錯体が光酸化還元反応を起こす可能性があることを確認できた。また電気化学測定から,様々な混合原子価状態が存在することが示唆され,本錯体設計の有用性を明らかにすることができた。さらにこれらの錯体の基本的反応性についても調査し,一部の二核錯体がハロゲン化アルキルを基質とするラジカル付加反応に高活性を示すことを見出した。対応する単核錯体では同様の反応活性を示さなかったことから,二核錯体化により特異な反応性が発現したものとして意義深い。また,修飾Cp配位子を用いる系についても,レニウムやタングステンを配位子に持つロジウム錯体の合成と構造解析に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
N,P-多座配位子や修飾Cp配位子を用いることで,ルテニウムを始めとする様々な2つの遷移金属を導入した遷移金属二核錯体の合成に成功したから。また,これらの錯体の紫外可視吸収スペクトルや電気化学測定から,光酸化還元能や様々な混合原子価の存在を確認することができたから。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに合成・構造決定したN,P-多座配位子を持つ遷移金属二核錯体を触媒として用い,二酸化炭素の還元的カップリング反応を検討する。特に可視光照射条件下での反応を検討し,アミンなどを犠牲還元剤として生じる二酸化炭素の1電子,あるいは2電子還元種と不飽和炭化水素やアリールハライドのカップリング反応によるカルボキシル化反応や,最終的には不活性C-H結合のカルボキシル化反応などを開発する。 また,修飾Cp配位子を用いた二核錯体については,sp3C-H結合活性化に実績のある後周期遷移金属を含む二核錯体を利用することで,アルカンの直接的求核付加反応や脱水素カップリング反応の検討を行う。
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