2020 Fiscal Year Annual Research Report
触媒金属の新たな転位過程を含む反応経路の開拓と機能性有機分子の選択的合成への展開
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20H02741
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新谷 亮 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50372561)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 選択的合成 / 転位反応 / 機能性有機分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
有機化合物は医農薬品や有機材料など幅広い分野で利用されており、有機合成化学のさらなる進歩は関連諸分野の発展に大きく寄与する。とくに遷移金属触媒によって選択性を高度に制御した触媒的精密有機合成反応は、効率性において優れた望ましい分子変換プロセスである。なかでも、反応の過程で触媒金属が有機分子上を移動する転位反応や異性化反応は、基質分子の直接活性化・官能基化ができない部位を反応点にすることができ、新たな分子変換・骨格構築を可能にする魅力的な手法であるが、これを利用した合成的に価値の高い触媒反応の例は非常に少ない。そこで本研究では、利用可能な金属の転位反応をこれまでより大きく拡充し、これを含む反応を精密に制御することによって新たな触媒反応経路を開拓し、従来法では困難な位置および形式での新たな選択的結合形成の実現を目指して研究を開始した。2020年度は主として、最近我々が見出した1,5-パラジウム転位を含む新しい反応経路による新規分子変換反応の開発を中心に検討を行った。具体的には、フェニルエチニル基とアリールシリル基をもつアリールトリフラートを用いることにより、パラジウムの1,5-および1,4-転位と炭素-炭素結合の形成を繰り返す新たな反応が進行し、含ケイ素7員環をもつ新規ケイ素架橋π共役化合物が高選択的に得られることを見出した。生成物の選択性は触媒として用いるパラジウム錯体上の配位子の種類によって大きく影響を受けることがわかり、金属錯体触媒による反応経路の制御が可能であることが明らかとなった。また、重水素標識実験等による反応機構解明に関する実験にも取り組み、本反応の詳細についての知見を得ることもできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度に取り組んだ新規分子変換反応の開発途上で、反応条件や基質の置換様式によっては、異なった反応経路による予期せぬ副生成物が生じることがわかった。この副生成物の構造解明ならびに反応経路の理解に時間が必要となったため、当初予定していた分子変換反応の開発には若干の遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度当初に予定していた反応開発もある程度達成されている。今後は得られる化合物の機能開拓を行うとともに、金属の転位反応を鍵過程とする新たな有用分子変換反応の実現に向けて検討を行う。
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Research Products
(8 results)