2020 Fiscal Year Annual Research Report
金属ナノクラスター/酸化物ナノ複合体の精密設計と機能開拓
Project/Area Number |
20H02749
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 康介 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (40595667)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 金属酸化物 / ポリオキソメタレート / 金属クラスター / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
構造、電子状態、界面構造が精密設計された金属ナノ粒子と金属酸化物担体からなるナノ複合材料は、既存の無機材料ではなし得ない触媒作用や物性の発現をもたらすと期待される。本研究では、分子状金属酸化物を利用して、構造、組成、電子状態などが精密設計された金属ナノクラスターを合成し、「1原子単位で設計した金属ナノクラスター/酸化物ナノ複合材料」を開発することを目的としている。 本年度は、分子状金属酸化物を利用した銀ナノクラスターの合成から着手した。これまで報告されてきた銀ナノクラスターは安定性に課題があり、その反応性を調べることや触媒反応への利用が困難であった。そこで本研究では、分子状金属酸化物を用いることで安定な銀ナノクラスターを合成し、触媒反応等に利用できる材料を開発することを目指した。配位サイトを有する分子状金属酸化物と銀イオンを反応させたところ、筒状に結合した金属酸化物[Si3W27O96]18-と銀ナノクラスターからなる複合構造が生成した。特筆すべきことに、この銀ナノクラスターは、銀原子の一部が露出しているにも関わらず溶液中でも非常に優れた安定性を持つことを見出した。また、この複合材料は、銀ナノクラスターから分子状金属酸化物への特異な電荷移動特性を有することを明らかにした。さらに、内径約1 nmの環状金属酸化物と銀イオンを反応させることにより、環状金属酸化物の内部に数や位置を定めて銀イオンを集積できることも見出すなど、今後の材料設計に繋がる重要な知見を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
分子状金属酸化物を利用して金属ナノクラスター/酸化物ナノ複合材料の合成に成功したことに加えて、銀原子が表面に露出しているにもかかわらず、前例のない高い安定性を示す銀ナノクラスターの開発を実現するなど、当初の計画以上に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に開発した金属ナノクラスター/酸化物ナノ複合材料の合成法を応用して、他の分子状金属酸化物を利用した金属ナノクラスターの合成を進める。特に、分子状金属酸化物に段階的に金属を集積することにより、核数や金属配列を厳密に制御した金属ナノクラスターの合成法を確立する。単結晶X線構造解析や高分解能質量分析による生成物の精密構造解析に加えて、XPSや放射光XAFSによる金属ナノクラスターの電子状態解析を行い、合成時の条件と得られる分子構造の相関を明らかにするとともに、新規構造の開拓を行う。さらに、得られた複合材料において、金属ナノクラスターと金属酸化物の機能を協奏的に利用することにより触媒的変換反応の検討にも着手する。
|
Research Products
(7 results)