2020 Fiscal Year Annual Research Report
Activation of unreactive molecules through the metal-group 14 element bonds of the base metal complexes
Project/Area Number |
20H02751
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
砂田 祐輔 東京大学, 生産技術研究所, 准教授 (70403988)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 金属ー14族元素反応場 / 普遍金属 / 配位不飽和 / 結合活性化 / 不活性結合 / 触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまで、ケイ素やゲルマニウムなどの第14族元素から構成される有機配位子を、遷移金属中心上に導入すると、これらは金属中心に対し強い電子供与性を示すとともに、かつ高いトランス影響を示すため、金属中心が高度に電子豊富、かつ配位的に不飽和な金属中心をもつ高反応性錯体種を効果的に構築できることを見出してきている。さらに得られた錯体において、金属ーケイ素および金属―ゲルマニウム結合は、様々な反応基質の捕捉・活性化を達成できる反応場として機能することも独自に見出してきた。これらの基盤的知見を基に今年度は、普遍金属として特にマンガン・鉄・ニッケルの活用に注力し、これらに対し有機ケイ素およびゲルマニウム配位子を導入した種々の錯体の開発法を開発した。 まず、かさ高いシリルアニオンもしくはゲルミルアニオンである-E(SiMe3)3 (E = Si, Ge)を活用し、マンガンもしくは鉄(II)ハライドと反応させることで、配位不飽和な4配位四面体型構造を持つマンガンおよび鉄錯体を簡便かつ高収率で合成できることを見出した。また得られた錯体はいずれも高い反応性を示すが、特にマンガン錯体を触媒として用いることで、安価で入手容易な還元剤である1,1,3,3-tetramethylidisiloxane(TMDS)を還元剤とする、カルボニル化合物の高効率的還元反応を開発した。本反応においては、TMDS内の2つのSi-H基の効率的な活性化が鍵過程となっており、配位不飽和マンガン中心によるSi-Hの捕捉と、引き続くSi-H結合の活性化により、反応が達成されている。 一方、Si-Si結合をもつ有機ケイ素化合物を前駆体として活用し、低原子価のニッケル前駆体と反応させることで、ニッケル上に2つの有機ケイ素配位子を導入した16電子錯体が得られることも明らかにした。特に、配位性官能基を持つ有機ケイ素化合物を用いることで、効率的に対するニッケル錯体が得られることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、普遍金属を中心金属として持ち、かつ金属上に第14族元素からなる部位を配位子として導入することによる、金属―14族元素反応場を持つ錯体の構築が、研究目的の遂行に向けて極めて重要な段階として位置づけられる。特に、金属中心が配位的に不飽和であり、様々な反応基質を捕捉可能な金属錯体の構築法を開拓することが重要である。一方、これまで本研究では、シリルアニオンもしくはゲルミルアニオンを配位子前駆体として用いて、金属ハライドと反応させる手法や、Si-Si結合をもつ有機化合物と低原子価金属前駆体と反応させる手法など、本研究で開発目的とする錯体の合成法となる2種の方法論を確立した。また、得られた錯体の反応性について調査し、マンガン錯体や鉄錯体が、Si-H結合などの結合活性化に対し良好な反応性を示すことを見出した。 これらの成果より、本研究における研究基盤となる錯体構築法の開発と、得られた錯体が高い反応性を示すことの実証に成功しており、本研究は順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、開発したマンガンおよび鉄錯体の基礎的な反応性のさらなる検証と、触媒的物質変換における普遍金属触媒としての応用を志向した検討を行う。まず、開発したマンガンもしくは鉄の配位不飽和シリル錯体を用い、水素などに代表される非極性小分子の活性化を行う。得られた知見を基に、マンガンや鉄化合物を触媒とするアルケンなどの不飽和有機基質の触媒的水素化をまず開発する。アルケンなどの水素化は、従来法では貴金属触媒により達成されているが、実験室的にも工業的にも重要な変換反応である。一般にマンガンや鉄などの普遍金属化合物は水素分子の活性化に対して低い反応性しか示さないため、これらを触媒とするアルケン等の水素化の開発は困難であるとされてきた。本研究では、ケイ素やゲルマニウム部位を配位子として持つ配位不飽和種を活用し、金属中心での効率的な基質の捕捉と、引き続く金属―14族元素反応場による結合活性化を基軸として、従来困難であるとされてきた、アルケンなどの不飽和有機基質の水素化をまず達成する。併せて、より不活性なC-H結合などの捕捉・活性化を経る変換反応の開発も視野に入れた展開を行う。
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