2020 Fiscal Year Annual Research Report
Rational Design of Artificial Metalloenzymes toward On-demand Functionalization of C-H Bond
Project/Area Number |
20H02755
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大洞 光司 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (10631202)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人工酵素 / 生体触媒 / ヘム / タンパク質 / 物質変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
有用な物質を生み出す環境調和型の自在な物質変換を実現するために、立体選択的かつ位置選択的に反応に不活性な基質を官能基化する触媒の開発が求められている。本研究では、高活性な金属錯体とタンパク質マトリクスを組み合わせ、高活性かつ高選択性を達成する人工金属酵素を合理的に設計し、有用な人工金属酵素を開発をめざしている。 具体的には、疎水性空孔を有するタンパク質に、高い触媒能を示す活性中心となる金属錯体を挿入し、さらにタンパク質を遺伝子工学的に最適化することで、高活性で、高い立体・位置選択的にC-H結合を官能基化する人工金属酵素をめざす。また反応メカニズムや構造から詳細を明らかにし、設計法を確立する。 本年度は、まずタンパク質としてミオグロビン、ヘルズゲートグロビン、シトクロムP450、ペルオキシダーゼを選択し、発現系の構築を行った。精製系も確立した。次に、人工金属錯体の調製を実施した。ヘムの配位子部分であるポルフィリンの類縁体であるポルフィセンやコロール、テトラデヒドロコリンおよびそれらに電子求引基や供与基を導入した分子の金属錯体をそれぞれ設計、合成し、タンパク質との複合化を実施し人工金属酵素を得た。得られる人工金属酵素について触媒活性の評価を実施した。触媒反応として、炭素-水素結合の水酸化、アミノ化、炭素化を実施した。水酸化とアミノ化において、一部の人工金属酵素が天然のヘムを超える活性を示した。特に水酸化に注目し、ミオグロビンあるいはヘルズゲートグロビンにマンガンポルフィセンを挿入した人工金属酵素が、過酸化水素を末端酸化剤とするアルカン類の水酸化に高い触媒活性を示した。さらに変異を導入し、活性や選択性の向上を試みた。得られた成果の一部は国内の学会において発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有用な物質を生み出す環境調和型の自在な物質変換を実現するために、立体選択的かつ位置選択的に反応に不活性な基質を官能基化する触媒の開発が求められている。本研究では、高活性な金属錯体とタンパク質マトリクスを組み合わせ、高活性かつ高選択性を達成する人工金属酵素を合理的に設計し、有用な人工金属酵素を開発をめざしている。 具体的には、疎水性空孔を有するタンパク質に、高い触媒能を示す活性中心となる金属錯体を挿入し、さらにタンパク質を遺伝子工学的に最適化することで、高活性で、高い立体・位置選択的にC-H結合を官能基化する人工金属酵素をめざす。また反応メカニズムや構造から詳細を明らかにし、設計法を確立する。 本年度は、まずタンパク質としてミオグロビン、ヘルズゲートグロビン、シトクロムP450、ペルオキシダーゼを選択し、発現系の構築を行った。精製系を確立し、得られたタンパク質を同定した。次に、人工金属錯体の調製を実施した。ヘムの配位子部分であるポルフィリンの類縁体であるポルフィセンやコロール、テトラデヒドロコリンおよびそれらに電子求引基や供与基を導入した分子の金属錯体をそれぞれ設計、合成し、各種分光法を用いて同定した。人工金属錯体とタンパク質との複合化を実施し人工金属酵素を得た。得られる人工金属酵素について触媒活性の評価を実施した。触媒反応として、炭素-水素結合の水酸化、アミノ化、炭素化を実施した。水酸化とアミノ化において、一部の人工金属酵素が天然のヘムを超える活性を示した。特に水酸化に注目し、ミオグロビンあるいはヘルズゲートグロビンにマンガンポルフィセンを挿入した人工金属酵素が、過酸化水素を末端酸化剤とするアルカン類の水酸化に高い触媒活性を示した。さらに変異を導入し、活性や選択性の向上を試みた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、本年度に構築した人工金属酵素をベースとして、変異体ライブラリーの構築に取り組む。人工金属酵素の構成要素の一つである金属錯体については、前年度の研究で反応性の高かったポルフィセンの鉄錯体、マンガン錯体等を利用する。また配位子への電子求引基や供与基等の置換基の導入についても引き続き検討する。タンパク質は、ミオグロビン、シトクロムP450等のアポタンパク質を用いる。これらは遺伝子組み替え大腸菌により発現可能である。活性中心近傍のアミノ酸残基を中心に変異を複数導入したライブラリーの構築を行う。これらに各種ポルフィセン金属錯体を組み合わせ、C-H結合の水酸化やアミノ化の触媒活性を評価する。この際、触媒活性や選択性の向上を優先して評価し、活性の高かったもののから順に同定を行う。活性や選択性の評価は生成物の液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーにより実施する。 単純な収率だけでなく、基質の濃度を変えた速度論的な評価を実施し、触媒活性において改善された点を明らかにする。特に、人工酵素の場合 、活性種の反応性、基質の結合能、触媒の寿命、副反応の抑制など、様々なファクターで触媒活性の向上が見込まれる。この中で重要なファク ターを明らかにし、それらに寄与する構造因子を解明する。構造因子の解明には触媒活性の高かった変異体の結晶構造解析や分子動力学計算を 用いる。また単純な一次配列から設計ができないかも模索する。構造的な因子の他に活性種の直接評価によりその性質からも設計ができないか検討する。 得られる成果は積極的に国際学会や学術誌にて発信する。
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Research Products
(5 results)