2021 Fiscal Year Annual Research Report
極限濃度色素液体ナノ粒子の創製と超高感度化学センシングデバイスへの展開
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20H02770
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
久本 秀明 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00286642)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | イオン液体 / 色素液体 / イオンセンサー / イムノアッセイ / アルカリフォスファターゼ / 塩化物イオン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では色素分子が液状で高密度に凝縮された「色素液体」をナノ粒子化し、インクジェットプリント技術で化学センシングデバイス化する。今年度は昨年度に引き続き研究項目①「イオン・酵素応答性色素液体ナノ粒子」の創製と基礎変色特性評価を実施した。イオン応答性色素液体として、新規化合物を合成し、それに基づく銀イオン選択性ナノ粒子および塩化物イオン選択性ナノ粒子開発に成功した。また、本提案で目的とするALP応答性色素液体開発の一環として、酵素応答性色素液体の新原理の検証を行った結果、ナノ粒子化した酵素応答性色素液体においてALP存在下で蛍光強度が向上する反応系の設計に成功した。今後、条件を詰めて行く。これらの成果のうち、塩化物イオン選択性ナノ粒子についてはRSCのAnalyst誌に掲載され、その号の表紙を飾る成果となった。銀イオン選択性ナノ粒子の成果は現在Anal.Chim.Acta誌に投稿中である。 研究項目②の高感度量産型1ステップマルチ診断デバイスの開発では、前年度検討した酵素活性アッセイデバイスを論文化し、Anal. Sci.誌に掲載された。また、当初の予定通り、色素液体ナノ粒子を含むハイドロゲル作製とデバイス化を試みた。イオン応答性色素液体ナノ粒子をアクリルアミドモノマーと混合してインクジェットプリントしたデバイスを試作し、光重合によるゲル化とイオン応答を評価した。その結果、イオン応答性ナノ粒子をハイドロゲル中に保持したままイオンに応答させることに成功した。現在、含有させるイオン応答性色素液体ナノ粒子自体の性能向上を試みており、そちらの結果が出次第、デバイス開発にフィードバックする。また、本提案で開発するナノ粒子表面の機能化で細菌・DNA検出応用の可能性が見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目①ではあらたに銀イオンや塩化物イオンに応答する色素液体材料を開発できた。銀イオン応答性材料ではナノ粒子化によって、薄膜時と比較して劇的に応答時間を短縮できることを見出した。また、塩化物イオンに応答する色素液体材料では、その材料中に存在する分子間相互作用がバックグラウンド信号の大小に大きく影響することをNMR測定などから明らかにすることができ、学術的にも極めて興味深い知見を得ることに成功した。研究項目②ではインクジェット装置で吐出する色素液体ナノ粒子含有モノマー溶液の吐出条件、また、吐出後に光重合する際の重合条件・固定化条件を検討し、一定の固定化条件を見出した。 以上のことから、順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は引き続きナノ粒子作製の条件検討を継続する。イオン応答性ナノ粒子の検討では用いる蛍光色素液体材料の検討も実施し、より汎用的かつ高感度な応答を示す系の設計を目指す。これをこれまで検討してきたインクジェット装置の吐出条件に載せることによって診断デバイス化する。酵素応答性ナノ粒子開発は条件検討を継続し、より大きな信号が得られる条件を見出す。また最近、ナノ粒子の機能化で細菌・DNA診断への応用の可能性が見出されたため、本提案の範囲内で予備検討を進める。
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