2020 Fiscal Year Annual Research Report
Effective fabrication and selective retrieval of hybridomas from among cell populations
Project/Area Number |
20H02771
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
安川 智之 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (40361167)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 雅登 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 准教授 (60574796)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 誘電泳動 / 細胞アレイ / ハイブリドーマ / 細胞融合 / 選択回収 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,マイクロウェルアレイ電極を用いた誘電泳動による超高速で簡便な細胞操作技術を基盤とした「迅速で高精度な標的抗体産生B細胞の選択的な細胞アレイ化」,「標的抗体産生ハイブリドーマのハイスループットな識別」,「異種細胞ペアアレイの形成と融合」および「捕捉されたポジティブ細胞の選択回収」の一連の操作を可能とする細胞チップの開発することである.本年度は,この目標を達成するために,「マイクウェルアレイを配置したバンドアレイ電極を用いた自由度の高い細胞操作」,「標的細胞の識別」,「異種細胞ペアの形成と融合」および「アレイ化細胞の選択的回収」に取り組んだ. マイクロウェルアレイ電極を用い,各ウェル内に形成する電場を制御することにより,特定のウェルにのみ細胞を捕捉することができた.また,すべてのウェルに細胞を捕捉し迅速(数秒)で細胞アレイを作製することもできた.さらに,形成された細胞アレイの中から特定の細胞だけをウェル外へと放出することができた.細胞のウェルへの捕捉およびウェル外への放出時の印加電圧,周波数,溶液導電率等の検討を行い最適化した. ハイブリドーマの細胞質を蛍光染色しハイブリドーマを認識するとともに,分泌される抗体をウェル底面の抗原に捕捉し蛍光ラベルしたところ,ハイブリドーマが捕捉されたウェルで抗体の分泌が示された.これにより,異なる種類の細胞群の中から抗体産生細胞を識別できることがわかった. 正の誘電泳動を用いて細胞アレイを形成後,異なる種類の細胞に対して同じ操作を繰り返すとウェル内に異種細胞ペアを形成することができた.ウェル内に免疫化マウスから取得した脾臓細胞とミエローマ細胞のペアを形成し,電気パルスを印加することにより細胞融合を誘発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
今年度,申請時に予定していた4項目のすべてに取り組んだ.「誘電泳動による細胞のアレイ化(項目1)」では,細胞の選択的なウェル内捕捉,アレイ化細胞の選択的な放出を達成した.この成果は,国際論文(2021年度の論文業績)として発表するとともに,国際会議の招待講演(学会業績10)で紹介した.「抗体産生細胞の識別(項目2)」では,ウェル内に捕捉した細胞アレイの中から抗体産生ハイブリドーマを識別ができた.また,この技術を用いて,免疫化マウスの脾臓中に含まれる抗体産生B細胞を識別することも可能であった.当初,初年度において本技術の免疫化マウスのB細胞への適用を予定していなかったが,本件に取り組み実サンプルから得た細胞からの抗体産生細胞の識別を達成できた.これは特筆に値する.この成果については,現在論文を準備中である.「異種細胞ペアの形成と融合(項目3)」では,ウェル内に異種類の細胞のペアを迅速(数分)に形成させ,電気パルス融合させることができた.さらに,3次元に配列した電極アレイを用いた融合効率の向上の可能性を示した.「ポジティブ細胞の選択的回収(項目4)」では,項目1で作製した細胞アレイの中から項目2を用いて抗体産生細胞を識別し,高機能性抗体を産生する細胞を選択的にウェル外へと放出することができた.この成果についても,項目2の論文に含める予定である.なお,細胞のウェル内外への導入出技術を細胞の電気回転に基づくと融合し,細胞の分化の評価に適用した(論文業績1および3).さらに,マイクロ流体システムと組み合わせた細胞の分離についても発表した(論文業績2).これらの成果は,本研究を遂行するにあたり,本研究で開発する技術の応用展開の範囲を拡充できる.これらのことから,当初の計画以上に進展していると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
「誘電泳動による細胞のアレイ化(項目1)」では,ウェル内に捕捉した細胞の負の誘電泳動によるウェル外への放出に課題があった.これは,細胞をウェルに捕捉した際のウェル内面への非特異吸着に起因する.ウェル底面(電極)に自己集合膜を利用して細胞非接着分子の導入等を行ったが,ウェル壁面への吸着が問題で放出できなかった.そこで,あらゆる表面の改質が可能なポリドーパミンの自己酸化によるポリドーパミン膜の形成によりウェル底面および壁面のコーティングを行い非接着分子の導入を行う.これにより,ウェル内への細胞導入およびウェル外への細胞放出の再現性を向上させる. 「抗体産生細胞の識別(項目2)」では,ウェル内に捕捉した細胞から分泌される抗体を細胞表層に捕捉,濃縮する技術を採用する.ウェル底面に抗原を固定化し,その抗原に分泌抗体を捕捉する方法では,細胞表面に発現した抗体がウェル底面の抗原と結合し,ウェル外への放出を阻害する.そこで,細胞表層を抗原分子で修飾し,分泌される抗体を細胞表層に捕捉し検出する.これにより,抗体産生細胞のウェル外への細胞放出および回収率の向上を狙う. 「異種細胞ペアの形成と融合(項目3)」では,ウェル内の細胞捕捉位置と電気パルス融合の関連について詳細に調査する.特に,ウェル内の電場シミュレーションにより,形成される電場勾配と異種細胞の配置の連関を調査する.電気パルスの印加条件(パルス幅,パルス電圧,印加回数,印加間隔等)の最適化を行い,高効率細胞融合法の確立を目指す. 「ポジティブ細胞の選択的回収(項目4)」では,項目1で行う細胞の非特異吸着の抑制を行い,高い再現性でウェル内細胞をウェル外に放出する.また,項目2で識別した抗体産生細胞の選択的な放出を行う.さらに,項目3で融合した細胞の放出にも挑戦する.これにより,各項目の技術を融合深化し,一連の技術創出を目指す.
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