2021 Fiscal Year Annual Research Report
大規模ポリマーライブラリを利用した細菌叢メトリクス
Project/Area Number |
20H02774
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
冨田 峻介 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (50726817)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯本 勲 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究部門付 (30358303)
宮崎 歴 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究部門長 (70358125)
菅井 祥加 筑波大学, 数理物質系, 助教 (10905566)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | バイオメトリクス / パターン認識 / 機械学習 / 高分子 / ブロック共重合体 / 細菌叢 / 凝集誘起発光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ポリエチレングリコールとポリリジンが連結したブロック共重合体を骨格とし、腸内細菌表面の特性に応じてさまざまな強さで結合させるための認識ユニットとして荷電性や疎水性の異なる様々な官能基、そして、ポリマーと細菌の結合情報を蛍光シグナルに変換させるための出力ユニットとしてテトラフェニルエチレンやフルオレセインなどの蛍光団を導入したブロック共重合体ライブラリを用いて、各種細菌叢の評価を試みた。はじめに、8 週齢のマウスを10日間、通常の状態で個別に飼育した後で二群に分け、一方はそのままの環境で飼育を継続し、もう一方は、活動リズムの乱れによる影響を評価するためのモデルマウス作成用ケージに移し、さらに28日間飼育した時点で採取した糞便サンプルに含まれる腸内細菌叢を対象とした検討を試みた。得られた腸内細菌叢試料を合成したブロック共重合体と混合すると、いずれも強い蛍光応答を生じることが確認された。続いて、このブロック共重合体セットを配置したアレイに対して腸内細菌叢試料を添加することで得られた蛍光応答パターンを線形判別分析によって解析したところ、正常マウスと睡眠障害モデルマウスの応答パターンに差異が認められ、さらに交差検証法からマウスの健康状態を高精度に診断できることが示された。これに加え、フルオレセインを導入したブロック共重合体のアレイによって藍染発酵槽由来の細菌叢試料を評価した結果、発酵槽の維持時間の変化や染色能の差異と相関する蛍光応答パターンを取得することにも成功している。また、ポリマー材料の改良を目的として、データベースから情報を収集し、多変量解析を利用して細菌センシングに適した構造の設計を実施し、細菌との混合により蛍光応答が得られることを確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
環境応答性のブロック共重合体のアレイを用いてマウス由来の腸内細菌叢試料を評価することで、腸内細菌叢の細菌組成を反映した蛍光応答パターンを取得し、これをパターン認識技術によって解析することでマウスの睡眠障害を高い精度で検出できることを示した。これまでに報告された分子プローブアレイとパターン認識技術を組み合わせたセンシングにおいて、腸内細菌叢に適用された例は初めてであることから、本技術は細菌叢の状態情報を簡易に認識し、分類・判別するための技術 “細菌叢メトリクス” として今後広く利用されると期待できる。加えて、ブロック共重合体のアレイを用いた本アプローチは、腸内細菌叢に限らず発酵槽由来の細菌叢の状態評価にも同様に適用できる可能性を見出している。さらには、細菌叢のより微少な変化を検出することを目指し、細菌に適した形への材料の改良も並行して実施しており、より合理性の高い設計方法を既に見出しつつある。以上の成果から、当初の計画通りに研究が進展したと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
[1] 腸内細菌叢の評価による多様なマウス状態の判別:開発した細菌叢メトリクス技術を運動習慣の良否の検出など様々なマウスの状態の判別に応用することで、本技術の適用範囲の拡大および適用限界に関する知見の取得を試みる。 [2] ポリマー材料の更なる改良:ウェブ上のデータベースから情報を収集し、それを解析することで設計した構造のポリマー材料のライブラリを用いて、各種細菌叢試料の評価を試みる。 以上の検討によって本課題で創製した細菌叢メトリクス技術の汎用化と高精度化を実現し、本技術の社会実装に向けた展開を推進する。
|