2021 Fiscal Year Annual Research Report
海洋マイクロプラスチックの真実に迫る‐熱分解分析を基盤とする包括分析法の開発
Project/Area Number |
20H02778
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
大谷 肇 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50176921)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石田 康行 中部大学, 応用生物学部, 教授 (70273266)
田中 祐志 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (90207150)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 海洋マイクロプラスチックス / 熱分解分析法 / プランクトン / GC-MS / 消失成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、マイクロプラスチック(以下MP)による海洋(及び湖沼・河川)汚染が大きくクローズアップされている。その実態を解明するためにはMPの分布や動態の信頼性の高い解析やモニタリングが不可欠であるが、現状ではその方法が確立していない。そこで本研究では、煩雑な試料前処理を一般にはほとんど必要とせず、高い確度と感度で試料高分子の分析を行い得る特徴を有した熱分解分析法を基盤として、水圏におけるMPの動態や分布状態を包括的に解明する画期的な分析方法を開発し、その真実を明らかにする。具体的には、1. 分析システムの超高感度・高精度化、2. 選択性向上のための特異的反応分解技術の開発、3. 複雑なデータから目的情報を抽出・解析する新規ソフトウエア開発、などの分析手法の総合的な高性能化を図る。これによって、海洋MPを始めて包括的に解析できる信頼性の高い定性・定量分析法を確立する。さらにこの方法を用いて、MP存在下でモデル的に培養したプランクトンの解析、さらには実際に海洋から採取したプランクトン中の解析などにチャレンジする。 2021年度は、10種類以上の異なるMP混合系の各成分を熱分解分析法により定量するための試料調製法及び解析ソフトウエアの開発に成功した。また、実験室内でMPとしてポリスチレンミクロスフェアを摂食させたオオミジンコを実験室内でモデル的に培養し、それらを一個体ずつ熱分解分析法により測定し、摂食したポリスチレン量を定量することに成功した。その結果、通常の餌が存在する状態で培養すると、MPの摂食量が著しく低下するという興味深い結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度当初に計画した、解析ソフトウエアの開発、及びMP存在下でモデル的に培養したプランクトンの解析、については順調に成果を上げることができ、多数の学会発表(招待講演、依頼講演、国際会議におけるkeynote講演などを含む)および専門誌への複数の英文学術論文発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
過去二年間の成果に基づき、最終年度は実際に海洋から採取した試料、特にプランクトンが摂食したMPの定性定量分析を中心に、検討を進める。また、これと並行して、実験室内でモデル的に培養したプランクトンについても、摂食させるMPや摂食条件を系統的に変化させた試料調製を行い、これまで確立してきた手法を用いて解析を進め、プランクトンによるMPの摂食について真実を明らかにする。
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