2022 Fiscal Year Annual Research Report
過渡円二色測定の高精度化による過渡状態分子のキラリティ検出の深化
Project/Area Number |
20H02806
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荒木 保幸 東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (80361179)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 電子励起状態 / 円二色性 / キラリティ / 過渡吸収 |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請は,これまで独自技術として培ってきた過渡円二色測定法をさらに簡便かつ高精度で行うよう改良することによって,広く科学の発展に寄与することを目的としている。 本年度はこれまで構築を行ってきた測定装置を用い,キラルな化合物として代表的であるヘリセンの電子励起状態,とくに励起三重項状態における円偏光二色スペクトルを高精度で測定することを主眼として研究を行った。ヘリセンはベンゼン環が螺旋状に連なる構造であり,ベンゼン環の数に応じてそれが6つの場合[6]ヘリセンと書くとする。本年度は,[9]ヘリセンにおいての電子励起状態の過渡円二色スペクトルの測定を目指した。これまで[6]ヘリセンの励起三重項状態の測定はすでに我々が報告しているが,[9]ヘリセンに関しては世界で初の測定例となる。[9]ヘリセンの過渡吸収スペクトルは,ピークが700 nm より長波長側に存在し,基底状態とは大きく異なる波長に存在する。円二色性はそのピークに明確に現れると期待されたが,結果として予想どおりに過渡円2色スペクトルが得られた。[9]ヘリセンの過渡円2色性の異方性因子(g値と呼ばれる)は0.01のオーダであり,基底状態における通常の円二色スペクトルが示す異方性因子とほぼ同じ値となった。この結果は励起三重項状態において,[9]ヘリセンの分子構造に大きな変化が起こらなかったことを意味していると考えられる。その特徴は励起三重項状態の密度汎関数計算からもおおよそ支持されるが,この結果は,むしろ本研究で得られた実験結果を元に,それを再現するような計算手法の探索が可能となったと捉えるべきであると考える。すなわち計算機科学分野へのリファレンスデータの提供という意味をもつ本研究実績は,単にスペクトル測定という研究内容を超え,広く科学の進展に寄与できると考えられる。
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Research Progress Status |
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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