2020 Fiscal Year Annual Research Report
3D Imaging Analysis of Chemical State during Adsorption Processes om MOFs with CT-XAFS Methods
Project/Area Number |
20H02822
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
坂本 裕俊 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 特任講師 (90768649)
|
Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | XAFSイメージング / CT-XAFS / MOF / 吸着 |
Outline of Annual Research Achievements |
MOFの実用化に向けて「階層化・複合化」、「異方性・非対称性」、「ディスオーダー・欠陥」の制御が重要であるが、これらはすべて「メゾスケールでのドメインの配列」に帰着できる問題である。MOFの挙動のメゾスケールでの構造的理解が重要であるが、その進展が遅れていた。 本研究では、この問題にCT-XAFSの手法で挑んだ。これによりMOF細孔内での分子の吸着-拡散-配列-反応、および骨格の動的変化が1粒子内で伝播する様子が、「金属イオンの化学状態の空間分布」が3次元イメージとして「視る」ことができるようになった。 具体的には、MOF結晶1粒子のCT-XAFS測定が行える試料セルの設計および実装を行った。これには、試料周りの雰囲気・温度を制御しつつ、鉛直方向を軸として試料を回転させる必要があった。先行開発されていた、クライオスタットを用いた試料セルは、雰囲気・温度制御に優れていたが、システム全体を精度良く回転させるには大型の機構が必要となり、現実的でないことがわかった。 そこで、単結晶粒子をガラスキャピラリ内壁に固定し、キャピラリ開端部をステンレス配管に直結させることで気密性を保ちながら、雰囲気制御ができるシステムを開発した。温度制御は外部から、窒素吹付け装置により、100~450Kの範囲で行えるようになった。これにより、MOF粒子試料の前処理からガス・蒸気吸着まで、同一試料でシームレスに行うことができ、かつ、各吸着平衡段階において、試料回転を伴うCT-XAFS測定を行うことが可能となった。 このキャピラリ試料セルシステムを用い、水を特異的に配位吸着するMOF-74Coの単結晶に対し、温度・雰囲気制御しながらCT-XAFS計測を行うことにに成功した。この計測で得られたXAFSスペクトルの特徴量(XANESピーク高さ)でMOF結晶1粒子を3次元イメージングすることに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当年度は、CT-XAFSに適したMOF試料の選定と試料合成・基礎物性測定、および、CT-XAFS測定用の雰囲気制御試料セルの設計と実装を進め、所定の目的であったMOF結晶1粒子の雰囲気温度制御下でのCT-XAFS計測を行う事ができた。 MOF試料は、分子吸着・脱着前後でXAFSスペクトルが有意に変化、すなわちオープンメタルサイトへの配位吸着を起こすものを基準に選定した。その結果、MOF-74-Coが、結晶粒子内の化学状態の空間分布を十分に可視化できる大きさの単結晶を生成し、水蒸気の吸脱着でXAFSスペクトルが大きく変化することが確かめられた。 測定系に関しては、研究開始時点でクライオスタットによる試料温度制御、ガスハンドリングシステムによる試料へのガス導入・排出制御できるシステムを構築していた。しかしこのシステムは、単結晶試料を、測定に適した希望の位置に合わせることが困難であり、この温度・ガス制御系内で、試料を放射光ビームに対して精密に回転運動させる機構が必要となる。システム設計案をいくつか考えたが、どれも相当に大掛かりなものとなり、制作の費用と時間から現実的でないことが予想され、測定系システムの抜本的な再考が必要となった。 そこで、X線低吸収ガラスキャピラリの内壁に単結晶試料を分散させ、キャピラリの開端部から、真空およびガス/蒸気圧制御が可能なガスラインに接続するシステムを設計した。温度制御はキャピラリ外から吹付け装置によって行う、これによりキャピラリ内の蒸気圧を段階的に変化させ、各蒸気圧下でのオペランドCT-XAFS測定に成功した。 測定セルの大幅な仕様変更があったにもかかわらず、回折法での雰囲気/温度制御下での試料回転システムを流用することで、本研究の大きな目的であった、単結晶1粒子CT-XAFS計測が1年目で可能になり、当初の計画以上に進展したと言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
当年度でガス/蒸気圧および温度制御されたキャピラリ内でのCT-XAFS測定法の基礎部分を確立することができたが、実装を進めるにあたっていくつかの細かな技術的な問題が表出してきた。たとえば、 (1) ガラスキャピラリとガスラインはOリングで接続されていたため、その接合部から大気がキャピラリ内にリークし、CT-XAFS測定中に蒸気圧力が変動する。(2) 単結晶粒子をガラスキャピラリ内に分散させると静電気等により内壁に付着するが、この接着力は弱く、キャピラリ内の真空・蒸気導入操作、または試料回転操作によって、CT-XAFS測定中に視野から脱落してしまう。 これらについては、以下のように対応する。(1)よりリークの少ないシステム:ガラスキャピラリをステンレス管に接着剤で直接固定し、これをSwagelok フェルールに直結させるセルを開発する。(2)結晶試料分散前にキャピラリ内部にごく薄く接着剤を塗布し、ここに粒子を分散させることで圧力操作・回転操作で粒子が脱落しないようにする。 また、当年度は、キャピラリ型試料セルの妥当性の検証を行うことがメインとなったため、SPring-8のビームタイム内で、異なる吸着質導入圧でのCT-XAFS測定を十分な点数で行うことができなかった。上記のリークと結晶固定の技術的問題を早急にクリアした上で、一度のビームタイムで十分な点数のCT-XAFSデータセットを取れるような、実験ルーチンを確立する。これによって、分子導入相対圧全体に渡って、各圧力段階での平衡状態の結晶粒子の化学状態の空間マッピングを達成する。
|
Research Products
(4 results)