2020 Fiscal Year Annual Research Report
超濃厚電解液のイオン集合様態制御に基づく電池特性の分子レベルデザイン
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20H02823
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
藤井 健太 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (20432883)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 祐 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助教 (70819284)
松上 優 熊本高等専門学校, リベラルアーツ系理数グループ, 准教授 (50455177)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 濃厚電解液 / Liイオン電池 / イオン溶媒和 / 電極/電解液界面 / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
高濃度のLi塩を溶解した超濃厚電解液が実用レベルの新しいLiイオン電池用電解液として注目されている。本研究では、超濃厚電解液を「Liイオン・対アニオン・溶媒分子」からなる3成分溶液として捉え、3成分間の相互作用により規定される「Liイオンの集合様態」を制御することで電解液の機能を高度に設計することを大きな目的としている。 本年度(2020年度)は、超濃厚電解液中のバルク構造、特に、Liイオンと対アニオン・溶媒分子の相互作用によるナノスケールイオン集合体の精密構造解析を進めた。Raman/IR分光実験、放射光X線散乱および計算化学的手法(DFT計算、全原子MDシミュレーション)を駆使してイオン集合体の局所構造、長距離構造解析を行い、特殊構造形成に及ぼすLi塩濃度および溶媒パラメータ(電子対供与性、分子サイズ)の効果に系統的に検討し、構造制御のための見通しを立てた。中でも、(1)特殊構造の長距離秩序性は溶媒の分子サイズに強く依存すること、(2)分子サイズの異なる2種の溶媒を混合することにより、超濃厚電解液中のLiイオン構造を単核錯体から長距離にわたる多核錯体まで制御できることがわかった。また、溶媒の電子対供与性(Gutmannドナー数)の大きさはイオン集合体の構造形成のみならず、電極反応を律速する脱配位過程に大きな影響を与えることがわかった。 これらの知見を集約し、低ドナー数を持つフッ素化リン酸エステルおよびフッ素化アセテートを主溶媒とする超濃厚電解液をモデル系に選択し、一般的な電極材料(グラファイト負極、コバルト酸リチウム正極)にを用いて電池特性を評価し、電解液設計と充放電特性の相関関係を議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主目的である超濃厚電解液のバルク構造解析に関しては計画通りの成果が出ており、局所構造や長距離構造に及ぼすLi塩濃度依存性や溶媒種依存性など、分子レベルの知見を得ることができた。一部の成果については論文投稿、学会講演にて成果報告を行った。また、バルク構造とイオン伝導特性の相関や電極/電解液界面における構造解析についても着手済みであり、成果を出しつつあるため、次年度以降の更なる発展が期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の成果(主に、超濃厚電解液のバルク構造解明とその制御法の確立)に基づき、今後はバルク構造と電極界面構造がどのような関係にあるのか、希薄系電解液との本質的な違いは何か、について分子論に立脚した研究を進める。具体的には、表面増強赤外分光測定により電極近傍の電解液構造をその場観察し、構造形成に及ぼす塩濃度効果や電位依存性を解明する。また、全原子MDシミュレーションにより電極/電解液界面構造の可視化を試み、実測データを理論的に検証していく。
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