2020 Fiscal Year Annual Research Report
Design and development of silica-based self-healing materials
Project/Area Number |
20H02826
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
下嶋 敦 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90424803)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 自己修復 / 自己組織化 / シリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度はシロキサン系自己修復材料に関して下記の検討を行った。 1)自己修復性有機シロキサン系ラメラ薄膜の設計 エチレン架橋型アルコキシシランと界面活性剤を用いた自己組織化プロセスで作製される有機シロキサン系ラメラ薄膜は高いクラック修復能を有するが、膜の硬度や基板との密着性が低いという問題があった。そこで、界面活性剤二分子層の厚みよりも長い分子サイズを有する有機架橋型アルコキシシランを新たに合成し、これを有機シロキサン系ラメラ薄膜の作製時に一定の比率で添加することで、ラメラ構造の層間を共有結合で架橋することを試みた。その結果、クラック修復能力を維持しながら、薄膜の硬度と密着性の大幅な向上を達成した。 2)かご型シロキサンを用いた自己修復材料の合成 シロキサン骨格のミクロ構造制御に基づく新しい自己修復材料の合成について検討した。二重のトリシロキサン環構造を有するかご型シロキサンオリゴマーをビルディングブロックとして用い、これを柔軟なポリジメチルシロキサンで3次元的に連結することで、透明なシロキサンエラストマーを得た。このエラストマーを切断した後、切断面を密着させた状態で高湿度の雰囲気下で加熱したところ、切断面が接着されることを確認した。トリシロキサン環はその歪みのために水存在下では比較的容易に開裂しシラノール基を生成する。実際、NMRやラマン分光分析によって、トリシロキサン環の開裂が確認された。破断面の表面に形成されたシラノール基同士の脱水縮合によって切断面が接着されたと推定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ラメラ構造の有機シロキサン系薄膜の設計については、層間を架橋するための新しい有機アルコキシシランの分子設計を行い、従来の課題であった膜硬度と密着性の向上に成功した。カゴ型シロキサンを用いた自己修復シロキサンエラストマーの合成については、修復に加熱が必要であり常温での修復にはさらなる検討が必要であるが、研究計画時に想定していたメカニズムによる修復現象が確認することができた。以上のことから、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ラメラ構造の有機シロキサン系薄膜の保護コーティングなどへの実用化に向けて、さらなる膜物性の向上を目指す。具体的には、シロキサン層の厚さを増加して膜硬度をさらに高めるとともに、界面活性剤の種類を変更することでラメラ構造の熱的・化学的安定性を高めるための検討を行う。一方、カゴ型のビルディングブロックを用いた自己修復材料の設計については、二重のトリシロキサン環を用いた系についてさらなる検討を行う一方、新たにフッ化物イオンを包接したカゴ型ゲルモキサンの利用についても検討する。フッ化物イオンはシロキサン結合の再配列の触媒となることから、シリコーンエラストマー中にこのようなカゴ型ユニットを導入することで、クラックなどの発生時にフッ化物イオンがカゴから放出され、シロキサン結合の再配列が促進されることで破断面の修復が期待できる。以上の検討により、様々なメカニズムに基づくシロキサン系自己修復材料の合成研究を推進する。
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Research Products
(4 results)