2021 Fiscal Year Annual Research Report
重水素標識昇温脱離分析による炭素材料の電気化学的酸化メカニズム解明
Project/Area Number |
20H02833
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
石井 孝文 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (50750155)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 炭素材料 / 電気化学 / 燃料電池 / エネルギー貯蔵 |
Outline of Annual Research Achievements |
燃料電池の電極などに用いられる炭素材料は、酸化反応に弱いという欠点があり、電気化学的酸化反応による劣化が問題視されている。しかし、電気化学的酸化反応の具体的なメカニズムの理解は未だ不十分である。本研究ではこれまでに,カーボンブラックの電気化学的酸化挙動を重水素標識昇温脱離分析(D-TPD)による表面化学構造分析によって追跡し,電気化学的酸化によってある特定の含酸素官能基が形成することが分かった.具体的には,Ph2(フェノール性水酸基が隣接したエッジサイト化学構造)、Ether、Carbonylが優先的に炭素表面に生成していることが分かった。さらに,炭素試料によって電気化学的酸化に対する反応性が異なることが分かった.この反応性の差異がどのような炭素構造によってもたらされるのか調査した.具体的には,基準となる炭素試料(KBEC600JDを使用)に対して,化学処理または熱処理を施すことで,炭素エッジサイトの量や質を制御した試料を調製した.これらの試料の電気化学的酸化挙動を硫酸電解液中,酸化電位1.5 V vs. RHEの条件で評価した結果,水溶液中での電気化学的酸化の反応速度は炭素表面のH2O酸化触媒能力によって左右されることが分かった.これまで,我々の研究グループでは,炭素表面の触媒作用について研究を進めてきた.炭素の電気化学的酸化もそのような炭素表面の触媒作用が強い影響を与える可能性がある.このH2Oの酸化に対する触媒作用を示す炭素表面の化学構造を明らかにすることで,炭素材料の電気化学的酸化の分子化学的理解が可能になる.そのため,今後,電気化学的H2O酸化反応に対する触媒点の化学構造の解明を実施する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
電気化学的酸化メカニズムの理解において重水素標識昇温脱離分析が強力なツールとなり,現実験条件での電気化学的酸化(1.5 V vs. RHE,硫酸電解液)の理解は概ね完了した.実験結果をまとめ,早急に論文化する予定である.研究の進捗状況としては順調に進展していると判断できる.一方,1.5 V以下の低電位領域での電気化学的酸化についてはまだ検討が不十分である.特に,O2/H2Oの酸化還元電位である1.23 Vより低電位では,H2Oの酸化反応は進行しないと予想される.そのため,そのような低電位での電気化学的酸化は,これまで調査した高電位(1.5 V)のものと原理的に異なる反応によって進行すると予想される.燃料電池等の炭素電極の動作電位は1.23 Vよりも低く,低電位領域における電気化学的酸化の理解は極めて重要であり,これについても今後検討する予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」の項で記載したように,電気化学的酸化メカニズムを理解する上で炭素表面のH2O酸化触媒作用の調査が必要不可欠となっている.そこで,表面化学構造を制御した炭素試料を調製し,そのH2O酸化反応触媒活性を回転リングディスク電極法により詳細に評価する.同電極法を用いることで,H2Oの酸化によって生じるラジカル種の検出が可能である.ラジカル種をより多く生成する炭素試料の構造的特徴を抽出し,H2Oの電気化学的酸化触媒点の同定を試みる.また,前述したように1.23 Vよりも低電位における電気化学的酸化メカニズムについて,これまでの解析方法を適応し,その理解を進める.
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Research Products
(7 results)