2020 Fiscal Year Annual Research Report
Development of defect-induced photovoltaic functions
Project/Area Number |
20H02835
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
野口 祐二 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 教授 (60293255)
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Project Period (FY) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 強誘電体 / 欠陥 / 光起電力効果 / 遷移金属 / 電子 / ホール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,分極性結晶における「欠陥」の光学活性を利用した材料設計により,高電圧出力用太陽電池や次世代超高速光通信を可能とする革新的光電変換機能の開拓を目的とする.太陽光の高効率エネルギー変換を目的に設計された中間バンド型太陽電池では,大きな光電流は得られるが,光電圧が半減するという課題を抱えている.我々は,空間反転対称性の破れに由来するバクル光起電力効果が,電子半占有の欠陥準位により約2桁増大することを見いだしている.光電変換において,光電流だけでなく光電圧の増強も可能とする材料・デバイス設計は他に例を見ない.しかし「なぜ光起電力が桁で増大するのか?」が学術的な「問い」として未解明である.本課題では,分極性結晶群を対象として,欠陥により誘起される光電変換機能の全貌を解明する. チタン系強誘電体単結晶を用いて、3d遷移金属イオンが作る欠陥準位を可視光活性中心として利用した材料設計指針を構築するために、第一原理計算と単結晶実験を行った。理論計算により、Fe2+が形成するドナー準位とFe3+がもたらすアクセプター準位が、それぞれ光照射により電子およびホールの生成に寄与することが予測された。単結晶を用いた実証実験の結果、Fe2+とFe3+が同程度の濃度を持つように制御した試料では、2eVの光エネルギーの照射により光起電力が観測された。またバンドギャップ(3.3eV)よりも低エネルギーの2.7eVの光照射により、光起電力が最大値を示した。理論計算と実験の有機的連携により、チタン系強誘電体において、Fe2+とFe3+の共存状態が織りなす不純物準位が、電子正孔対生成の足場となって、大きな可視光起電力効果が得られるという材料設計指針が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験・計算の連携により,点欠陥,複合欠陥や面欠陥(ドメイン壁等)により誘起される光電変換のメカニズムを試みた.モデル材料としてTi系強誘電体を選択し、可視光活性を誘起するために、Feイオンの3d準位を導入した。光子エネルギーが2eVにおいて、光キャリアとして電子が注入されて、光起電力が観測された。その後、2.5eV付近においてホールが注入された結果、電子・ホール対が主な光キャリアとなり、光起電力が増強された。 さらに、可視光起電力効果の起源を解明するために、光電流の偏向角依存性を評価した。群論から導かれる解析式と実験結果のフィッティングにより、光起電力テンソルを導出した。その結果、33と31のテンソル成分ともに負の値をとること、またその絶対値は33よりも31の方が大きいことが明らかになった。無偏向の光照射により得られる光起電力は、33成分および31成分がともに負に大きいことに由来することを明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
チタン系強誘電体材料を主として、複合欠陥や面欠陥により誘起される光電変換機能の開拓およびそのメカニズムの解明を行ってきた。バンドギャップの中間近傍に導入した電子半占有の欠陥準位が、エネルギー的足場として機能して電子正孔対が生成すること、および励起状態におけるキャリアとフォノンのカップリング、すなわちポラリトンが重要な役割を果たしていることを突き止めた。今年度は、チタン系に加えてニオブ系材料も対象として研究を推進し、光起電力テンソル解析およびキャリア寿命などを含むダイナミクス評価を行い、学術的問いを明らかにする。
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